SSブログ

鬱金桜と御衣黄 [自然]

image-20120422182233.png

毎年、近所の妙正寺公園の近くに一本だけある、鬱金桜を見に行く。
散歩道を覆うようにして咲く、かなり大きい木である。散歩道は、家のそばを流れる妙正寺川に沿って源流のある妙正寺公園まで続いている。下流は神田川となる。
この散歩道は数本ある大小の樹のソメイヨシノがまず咲き、散る頃になるとしだれ桜の並木が一斉に咲いて花のトンネルを演出して散策する人の目を楽しませる。
鬱金ざくらはこの枝垂れ桜が終わる頃咲き始めるのだ。もちろん同じころ近くに何本かあるピンクと白の八重桜も咲き始める。こちらの花の名は知らない。
平成15年自己流俳句を始めたばかりの時に

意馬心猿鬱金桜に風と消え
と詠んだ。
句は字余りの駄句そのものだが、読んだ気持ちはあれこれ考えていたつまらぬ事など、一瞬みな忘れてしまうような美しさだとそれを表したい一念だけで作ったもの。当時たしかに、つまらぬことに振り回されていたのである。
意馬心猿という言葉を何かで読んで、頭の隅にあったのだろう。国語辞典に「 妄念や煩悩( ぼんのう) が激しく、心が乱れるのを抑えがたい様子を、奔馬や野猿が騒ぐのを抑えがたいさまにたとえたもの。 仏教用語、とある。

薄っすらと緑がかった花びらは、ピンクの八重桜とはおよそ似ていないで一種独特の雰囲気をもっている。 この木は民家の庭に植えられたものが大きくなり、散歩道の上を跨いで越え枝が川にまで垂れている。木に鬱金桜と墨で書かれた板が下げられている。
毎年これを見て、昔大阪の造幣局の通り抜けで見た沢山の桜、鬱金桜もあった、を思い出すならいである。

ウコン(鬱金桜)は、学名「Cerasus lannesiana 'Grandiflora' A. Wagner」、サクラの栽培品種である。開花時期はソメイヨシノより遅めの4月中旬~下旬頃。今年は厳寒でソメイヨシノは遅れたがウコンはあまり遅れなかったようだ。
花弁に葉緑体をもつなど性質はギョイコウ(御衣黄)に似ているが、色は緑色が弱く淡黄色である。300以上の品種があるとされるサクラのうちで唯一、黄色の花を咲かせるサクラという。御衣黄より花弁は薄く、丸みを帯びて尖っていない。

名前は、ショウガ科のウコンの根を染料に用いた鬱金色に由来する。「鬱金桜」あるいは「鬱金の桜」と呼ばれることが多い。    
 大阪で取引先に伏見の黄桜酒造があり、よく表敬訪問した。尤も回数は月桂冠の方が多かった記憶があるが。
黄桜酒造、今は黄桜株式会社に変わったようだが、社名もメイン銘柄「黄桜」はオーナーの庭に鬱金桜がありそこから命名されたという。
清水昆、小島功の美人河童やあの懐かしい、楠木トシエのコマーシャルソングでも有名である。

♪ウイ・ウイ・ハア・ウイ
ウイ・ウイ・ハア・ウイ
カッパッパ ルンパッパ
カッパ黄桜 カッパッパ
ポンピリピン 飲んじゃった
ちょっといい気持ち
のめる もめる のめる もめる
いける ける ける ける
黄桜 黄桜 ソフトなお酒
古いのれんの モダンな味
カッパッパ ルンパッパ 黄桜
ハウ・ウイ・ウイ♪(田中正史 作詞作曲)

蔵のそばに河童記念館カッパカントリーというのが出来ていて、河童の絵や酒のポスターなどが展示されていたのを思い出す。

image-20120422182300.png


さて、今年は先だって知人が教えてくれたので、子供達が通い卒業した中野北中学校の校庭にある御衣黄を、はじめてわざわざ見に行った。3本もあってこれもまた見事に満開で美しかったが、近眼の目には先の鬱金桜と殆ど同じでようで区別がつかなかった。
ギョイコウ(御衣黄)は、学名「Cerasus lannesiana 'Gioiko'Koidzumi」、鬱金桜と同じ、サクラの栽培品種である。

大きさは中輪から大輪の八重咲き(花弁数は10から15程度)で、花弁は少し厚めで外側に反り返る。尖った感じもする。色は白色から淡緑色である。
中心部に紅色の筋があるというが、咲いたばかりでまだ目立たなかった。次第に中心部から赤みが増して、散る頃にはかなり赤くなるというから鬱金桜とだいぶ異なる。
やはり緑色の花を咲かせるサクラである。この緑色は葉緑体によるもので、同じく葉緑体をもつ鬱金も若干緑色がかかるが、その量が多いらしくこちらの方はもっと濃い感じである。
濃緑色の部分の裏側には、鬱金の花にはない気孔があるというが、自分にはどこにあるのかどんなものかも全く分からない。
名前の由来は、貴族の衣服の萌黄色に近いためとされる。古くは「黄桜」「浅葱桜(浅黄桜)」などとも呼ばれていたが、それが御衣黄なのかそれとも鬱金を指すものなのか不明とか。

平成20年 新宿御苑へスケッチに行った時、画友が「ギョイコウ」と木に板が書いてぶら下がっているのを見てどんな字を書くのかしらね、というので「御衣更」じゃないですかと答えた。
気になってあとで調べたら間違っていたので、慌てて葉書を出して御衣黄と訂正した。次の腰折れを添えた。

御衣黄に更の字あてしおっちょこちょい花便りにてお詫び訂正

詳しい人でないとこの二つの桜の区別がつかない。しかし、御衣黄は青野菜の菜っ葉の匂いが強いのに反してウコンはほんの少し甘い香りがするから分かるという人もいるようだが、加齢により嗅覚も衰えている当方にはまず無理というしかない分別方法である。
好きずきであろうが、自分にはこの鬱金桜と御衣黄は極めて魅力的な花である。
しかし、どちらかといえば八重桜なら「イチヨウ 」の方が、好きだという人が多いのではないかと思う。こちらは何しろ明るく艶やか、まさに桜の女王だ。
イチヨウは学名「Prunus lannesiana Wils. cv. Hisakura」、花の中心部から葉の形に変化した雌しべが一本突き出ており、この様子からイチヨウの名前がついたという。この花は、ウコン、ギョイコウと違ってピンク、桜色だ。大輪の花のブロッサム・かたまりで見るからに「牡丹桜」と呼ぶに相応しい。

今年も、幸いなことにいろいろな桜を堪能できた。東京の桜も、古い大きな樹で切られたもの、電線にかかるからと枝を下ろされたものもあるが、個人の庭にあるものも含めて確実に数も増え、太く大きくなっている。今のところ災害も少なく平和で何よりである。何とかこれが続くよう願うばかりだ。東北の桜の話を聞く度に、その復活に思いを馳せしみじみと祈るのみである。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。