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華屋与兵衞 (3終)「鮓」「鮨」「寿司」「 寿し」「すし」「スシ」「sushi」 [雑感]

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すしは、辞書では「鮓」、「鮨」、「寿司」とあり、形容詞「酸(す)し」の終止形から、として
①塩をふった魚介類を飯とともに漬け、自然発酵によって酸味を生じさせたもの
熟れずし。生熟れ。
②酢で調味した飯に、生、または塩や酢をふりかけた魚などの具を配した料理。握りずし・散らしずし・蒸しずしなど。
酢は暑さに耐えるので夏の食品とされる。とある。

①は琵琶湖の鮒寿司が代表であろう。秋田のはたはた寿司(飯ずし)も名高い。
江戸前ずしはむろん②の方であるが、古いタイプの鮨はどちらかといえば①に近く時代の好みに合わせて次第に②の携帯用やファーストフードに変容したようにも見える。
②のうち「蒸し寿司」というのは、ちらし寿司や時には握り寿司を蒸したものをいう。穴子や鰻などは最初から蒸してつくる。大阪の吉野鮨が有名。温かくして食べる鮨である。
子供に圧倒的な人気の稲荷寿司、おいなりさんも江戸後期のもの。甘く煮た油揚に酢飯を詰める。干瓢を巻いたりするものなど、全国各地に特有なものがある。これなどは①ではないだろうから、②に入るのだろうか。

辞書には「鮓」、「鮨」、「寿司」の使い分けは書いてないし、自分も適当な使い方をしているが、「 寿し」「すし」、「スシ」「sushi」も含めてそれぞれ何となく雰囲気があるのが面白い。たくさんの表記があるのも、人気の高い食品である証差であろう。

北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん、1883年(明治16年) 1959年(昭和34年)に「握り寿司の名人」がある。(「魯山人の食卓」グルメ文庫)
江戸前寿司と上方寿司の違いなど、相変わらずの博覧強記ぶりを披露しているが、旨いすしについてこう書く。
寿司の上等もやはり材料が問題である。
1 最上の米(新潟・福島・秋田辺の小粒) 
2 最上の酢(愛知赤酢・米酢) 
3 最上の魚介類、だいたいにおいていちばん高価な相場のもの。 
4 最上の海苔(薄手の草をもって厚く作ったもの)
5 最上のしょうが(古しょうがの良品、新しょうがは不可)
しかし、寿司は職人の握り方でえもいわれぬ旨味が出るというのは常識である。この本にこのことは触れられていない。片手落ちというものであろう。
この人は京都出身であるが、京阪流箱寿司より江戸前寿司の方を評価している風にみえる。東京の寿司の名店については「現に新橋付近だけでも何百軒とあるであろう。この中で挙げるとなると、昔、名を成した新富その弟子の新富支店、久兵衛、下って寿司仙くらいなものだろう。」と書いている。
残念ながら久兵衛の名前だけしか知らない。
いずれにしても、こういったスーパー美食家の味蕾は、我が鈍磨した舌とはちと違うだろうからあまり参考にならない気もする。

鮨は好物である。これを嫌いだ、という人はあまり聞かない。刺身など生魚がダメという人でも、鮨ならという人も多い。「sushi」は早くから外国人も食べ、アボガドロールなどもあっていまや立派な国際的食品である。回転寿司さえ海外に輸出されているそうだ。回転寿司はファーストフードでかつ「時価」がなく明朗会計だが、どんなに高級ぶっても食欲もグルグル廻っているようで雰囲気はもう一つだ。

これまで食べたすしのなかでは、大阪鯖の太巻き、大阪平野の箱寿司、 富山の鱒の寿司、奈良の柿の葉すし、琵琶湖の鮒寿司、兵庫のあなご鮨などが印象に残っているが、全国各地にその地特有の美味しい鮨があるのは嬉しい限りだ。
現代の東京のすし名店は銀座久兵衛はじめ数多くあれど、自分が楽しむには、敷居が、たぶん勘定も、高すぎるので名前だけしか知らない。しかし築地魚市場場内の店などは雰囲気も結構、値段もリーゾナブルで楽しめる。
家人は、京橋にある「目羅」を友達に教えて貰いお気に入りなので、一度付いて行ったことがある。ランチタイム鮨であったが、なるほど特別メニューだけに有難い値段なのに、すこぶる結構な味であった。今もあるかどうかは知らない。人皆それぞれ好きな贔屓にしている鮨店を持っているようだ。残念ながら自分にはないが。
梅原猛が、鮨は縄文時代(すなどりの魚)と弥生時代(稲作の米)の融合型のまさに日本らしい食品と言ったが、海苔を使うところも含め海洋国日本のオリジナルな料理として、長い歴史を持つものであることは疑い無い。江戸三鮨に代表されるように、とくに質量とも江戸時代にブレイクしたことも特記すべきことであろう。
まぐろをはじめとして「すしネタ」の尽きることのないよう、人間が馬鹿なことをせずに、自然環境がいつまでも維持されんことを祈るばかりだ。

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