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白鳥丸(しらとりまる)水産と和(なごみ)や [随想]


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もうだいぶ前のことになるが、ご近所の二人のお嬢さんが相次いで結婚した。子供たちと同じ小中学校に通い、年頃も同じくらいなので母親同志も友達だ。
結婚のお相手は、一人が千葉の勝浦の漁業者、もう一人は群馬の農業者のところへそれぞれ嫁いだと聞いて、へえと思った。お嫁に行くまでの経緯は知る由も無いが、二人とも都会っ子だからちゃんとつとまるのかな、と思ったのである。
二人の母親と家人が親しいので、そのうちすぐに情報が入ってきた。二人とも元気で楽しくやっているとのこと、余計な心配であった。

勝浦の方は、「白鳥丸水産(しらとりまるすいさん)」といって魚や干物などの販売もしているとか。中元、歳暮用に使って欲しいと母親の紹介があり、ずっと便利に使わせてもらっている。もちろん事前に自分達でも買って食べ、受け取った人も必ず満足するだろうと確信した上でのことである。魚の開きやひじきなど海藻類のセット、結構な味で、値段もリーゾナブルだ。多分、間違いなく干物は天日干しであろう。

また、毎年五月頃になると、良い鰹がとれたのでいかがですか、と電話がかかる。
最初は丸のまま氷詰めのトロ箱で送って貰った。家人は昔大分で養殖鰤の大きなのを捌いているので丸のままでもいっかな驚かない。しかし、そのうち捌くのが大変になって、最近は2枚におろしてから送って貰うことにしている。
初鰹で産地直送、翌日届くので新鮮そのもの、流石に美味しい。寿命が間違いなく、伸びるというものだ。

群馬の方は、無農薬栽培であるが、若いご主人も経験もない農業新規参入者である。桐生の近くの山あいに土地を借りて、農家の人に教えて貰いながら畑作農業を営む。その様子は、農作業の合間に書くブログで詳細を知ることが出来る。自分はRSSに登録して逐一読む。写真も文も素晴らしいブログである。
http://nagomiya.blogzine.jp/
「和(なごみ)や」と称して農産物の通販をしている。これも母親の紹介で、我が家も宅配して貰っているが、人参、玉ねぎ、ほうれん草など野菜類が主体で泥付きもあり、新鮮そのもの。月に一回だが、野菜の採れない冬場は休みである。お嫁さん手作りのオニオンパンなどが入っていたりして楽しい。
この夫婦は、地域の子供たちの食育教育や、母親のために野菜料理を学ぶ野菜塾を開いたりしている。お嫁さんは野菜ソムリエでもあるのだ。

もっと昔のことだが 、杉並区久我山の知人の末の息子さんが、やはり新規参入で酪農を始めた時に、同時にお嫁さんを迎えた。その相手のお嬢さんが練馬の方で、女の姉妹ばかりの育ち、農業など全く無経験な方と聞いた。
彼は大学で山登りばかりしていたが、卒業して何を思ったか、北海道の離農農家から農地と酪農施設をリース方式で買取り、搾乳牛を飼い始めたのである。当時リース方式は、離農と新規参入を円滑にするための画期的な方法として脚光を浴びていて、たしか公的な補助も若干あったと思う。
知人からリース方式や農林漁業金融公庫の低利資金などの相談を受けたのでスタートした頃の様子をよく伺った。知人はお金持ちだが、心配のしどうしだと嘆いていたけれど、本人は結局自力で酪農経営を軌道にのせたようだ。
場所は北海道枝幸である。道南の江差でなく稚内の近くオホーツク海側の枝幸である。冬は長く雪深い。しかも二人は牛を飼うかたわら、三人の子供を育てあげた。

この三つの例を見ていると、大袈裟な謂いになるが、農林水産業の後継者難の問題に曙光を見る思いがする。とくに若い女性の逞しさに瞠目せざるを得ない。
自分は40年近く勤めた職場が農林水産業関係だったので、少しは現場も見ているから、農業、林業、漁業の作業のしんどさも知っている方だと思う。
とくに農業に従事する女性は補助などというものではない。いまや主役であり、その上家事、育児等諸々の仕事もしなければならない。酪農はその典型だが、相手は生き物、自然である。酪農ヘルパー制度などが出来るまでは、休暇など一日たりとも取れなかった。

それを三人のお嬢様方が、少なくともはためには、苦もなくやってのけているのだから、若さと最愛のご主人がいるとはいえ、感服するのみである。
また、自分がこの歳になると、とくに身につまされるのだが、親御さんのご心配も並大抵では無いと思われる。とくにお嫁さんの母親の思いは、いかばかりであったろうか。

3.11後特に思うのだが、これからはもはや若い人の力だけが希望だ。また、若い人は必ずその期待に応えてくれると確信している。年寄りは余計なことはしない方が良い。何より若い人の邪魔をしないこと、それだけが大事なことだとあらためてしみじみと思うのである。
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