SSブログ

アーティチョークと野あざみ [自然]

image-20120704112457.png

散歩中、よその家の軒下で、大きな見なれぬ植物を見た。庭に植える草花は小さいものという先入観があるから、一回り大きいと少しびっくりする。色はくすんだような白っぽい緑色。大きな薊(あざみ)のような花が咲いている。薊にしては大きい。いくつかついている蕾の形を見て気がついた。あ、これはもしかして、最近雑誌か何かで見たアーティチョークかも?。
調べて見るとやはりそうであったが、普通の民家の庭でこういうものが栽培されるとは思っていなかったので気がつくのが遅れたようだ。

アーティチョーク(Artichoke、Globe artichoke、学名:Cynara scolymus)は、キク科チョウセンアザミ属。大形で野アザミに似た宿根草。和名はチョウセンアザミ(朝鮮薊)。地中海沿岸原産。高さは1.5mから2mになり、葉は50cmから80cmに達し、つぼみは8cmから15cmになる。とにかく大ぶりである。
江戸時代にオランダから日本に渡来したというから、最近のものということでもないらしい。

image-20120704112542.png

若いつぼみを食用とするいわゆる花菜類の一種。フランスやイタリアで好まれる野菜とか。にぎりこぶしより大きい頭花の蕾をゆでて食べる。食べる部分は蕾の中の「花芯」のようだ。ショートスパゲティに入れたりして食べるらしいが、残念ながらまだ食べる機会に接していないのでどんな味がするものやら知らぬ。

アーティチョークは、あまり一般的ではないが、かたや薊(あざみ)の方は日本の山地に自生する野の花。昔から親しまれた野草で誰もが知っている。
このアザミ(薊)は、キク科アザミ属 (Cirsium) だからアーティチョークと同じキク科ながら属が異なる。(アーティチョークはチョウセンアザミ属)

さて、この我々に身近なあざみ、アザミ属の方は、世界に250種以上あり、日本には100種以上あるという。薊というのはそれに類する植物の総称でもある。標準和名を単にアザミとする種はないとか。
地方変異が多いのが特徴で、このうち和名ノアザミ Cirsium japonicumが最も一般的なものである。C.japonicumというのだから日本で発見されたのであろうか。日本固有のものなのかも知れない。

あざみの別名は刺草(しそう)。あざみという名前の由来は、いろいろあるようだが「アザム」(傷つける、驚きあきれる意)がもとで、花を折ろうとするととげに刺されて驚くからという説が有力である。漢字も草冠に魚と刀、魚は骨であろう。棘のイメージ。
とにかく触れれば痛い草の代表であり、薊といえば棘を連想するのは、バラの花にとげを思うのに似ている。スコットランドでは、そのトゲによって外敵(イングランドに違いなかろう)から国土を守ったとされ国花となっている。

歳時記では、野薊、花薊 として春の季語。ただし夏薊(なつあざみ)は夏。
「キク科の多年草、春から咲き花期が長い 多数の筒状花が集合した頭花で紫色または薄紫色。葉は厚く鋸歯(きょし)状、尖端は鋭く棘状になっている」とある。
句例 大原女の三人休む薊かな 野村喜舟

薊の句には他に

妻がもつ薊の棘を手に感ず 日野草城

がある。新婚の妻を詠んで「ミヤコホテル論争」を引き起こした草城だからと言って深読みはいけない。素直に読めば佳句と分かる。

ところで、話が逸れるし、歳が知れるというものだが、薊といえば歌謡曲の「アザミの歌」を思い出す。
昭和24年8月(1949年)のNHKラジオ歌謡 で伊藤久雄が歌いヒット曲となる。ほかに倍賞千恵子らの歌もある。
作詞は18歳の復員兵、横井弘 。家族が疎開していた下諏訪・霧ヶ峰八島高原で、アザミの花に自分の理想の女性像をだぶらせて作詩したとされる。作詞者18歳、復員兵とは、驚きを禁じ得ない。

自分は9歳、小学生だったが、山や海にも憂いがあるなどとまるで理解も出来ず、「汝はあざみ」は「名はあざみ」とばかり思っていた。むろん恋も知らず空腹感だけで山野を走りまわっていて詩情などおよそ縁なき幼年時代であった。しかるに9歳上の人がこんな歌を作っていたとは。

 八島高原には、この歌の歌碑が建っているという。かつてそこら辺りを散策したことがあるが、全く気が付かなかった。七島八島湿原には、風露草、マツムシソウ、ツリガネニンジンなどがたくさん咲きみだれていて、たしかにアザミの花がそこここに咲いていたのを覚えている。
作曲は「毬藻の唄」、「さくら貝の唄」、「山のけむり」などの八洲秀章。

♪あざみの歌
山には山の 愁いあり
海には海の 悲しみや
ましてこころの 花園に
咲きしあざみの 花ならば

高嶺の百合の それよりも
秘めたる夢を 一筋に
くれない燃ゆる その姿
あざみに深き わが想い

いとしき花よ 汝はあざみ
こころの花よ 汝はあざみ
さだめの径は 果てなくも
香れよせめて わが胸に

岡本敦郎の歌った「白い花が咲く頃(作詞:寺尾智沙、作曲:田村しげる)」も翌年の昭和25年11月(1950年)発表された同じNHKラジオ歌謡である。
この二曲は、戦後間もない時期の抒情歌の名曲とされる。 
 昭和24、25年といえば、敗戦時の混乱がようやく収まり、就職や進学のために田舎から東京などの大都市へ出てくる若者が増え始めた時期と重なる。テレビなどはなくまさに歌はラジオとレコードだけの時代である。その頃二十歳前後の人には、その頃の我が身に思いを重ね、たぶん忘れることの出来ぬ懐かしい歌であろう。
なお、昭和25年6月に朝鮮戦争が起き、いわゆる特需によって経済復興に弾みがついたとされる。復興から徐々に成長期に移行していくことになる時期である。

閑話休題。
薊の中には山菜として食べられるのもあると聞いた。自分が疎開した栃木県那須地方では、蕨、ぜんまい、たらの芽など種々の山菜を食べるが、薊は沢山生えていたにも拘らず食べる習慣はなかったように思う。
また、会社に勤め、転勤で新潟市に三年住んだがここでも食べたことがなく、薊が山菜とは不覚にも知らなかった。新潟も知る人ぞ知る山菜王国である。
どんな味がするものやら、アーティチョークなどよりこちらの方を先に食べて見たいと興味がある。
食用に栽培されるモリアザミ(森薊、キク科アザミ属、学名 Cirsium dipsacolepis)というのもあるらしいが、どこで栽培され、どう食べるのか知らない。

我が国で食べるのは、サワアザミ (C. yezoense :近畿以北の日本海側沢沿)かミヤマサワアザミなど、山菜としての野生の薊である。食用部分は新芽や根(山ゴボウ)などであるという。

アザミ類は深山でなく平地に多いから採取はたやすいが種類も多く、花が咲かないと薊と特定が困難だそう。しかし枯れた去年の薊のそばに出ている新芽を探すのがコツとか。なるほど、さもあろう。

むろん若芽でも棘だらけだが茹でると、棘も柔らかくなるというから問題ない。
若葉や若茎は 茹でて味噌汁の具、胡麻和えに、小さい物を生のまま天ぷらにすると美味しいという。
 根はアクがあるので茹でた後によく水にさらし、ごぼうのようにきんぴらや味噌漬け、醤油漬けにして食べるらしい。

image-20120704112621.png

ぜんまいわらび に代表される山菜は、地方各地にその種類も食べ方も多彩、野趣あふれる味合い深いものであるが、林業用語では、木の実やきのこなどと同じように特用林産物という。
山形県のHPに特用林産物「山形置賜(おきたま)伝統野菜」と銘打ったわらび、ぜんまいとならんであざみが紹介されているのを見つけた。
http://www.pref.yamagata.jp/ou/sogoshicho/okitama/325043/dentoyasai/azami.html

HPにはこうある。
 「あざみは、「ごぼうあざみ」という方言で食されており、学名ではサワアザミと呼ばれています。本州中部以北、北海道の山地に生える大型の多年草であり、茎は、高さ1~2メートル、中空で太く、全体に短い毛があって白緑色です。やわらかい茎を採取し、油いためや和え物として食します。あざみは、この種類のほかにダキバヒメアザミが食されています。
 あざみは、栽培ものはほとんどなく、山地に自生しているものが販売されています。山形県の生産量は、4.2トン(平成16年次)で全国第3位の生産量となっており、置賜管内の生産量は4.1トンで県内生産量のほとんどを占めています。
 自然ものであることから安全・安心の品目であり、5月から7月にかけて旬の味を楽しむことができます。
古来より食されてきた山菜であるが、特に、山形県内では置賜地域でより多く食されてきました。置賜地方では、ふつう、茎を食用にしていますが、青森地方では、早春に若芽を食べる習慣があります。
あざみは、利尿作用や神経痛などの効果があるといわれています。
 料理方法としては、生のあざみをみじん切りにして味噌汁の具として食するほか、煮物や油いためにし、歯ざわり、舌ざわり、特有の香り等を楽しむことができます。保存には、塩蔵漬けで長期保存が可能であり、冬期間に食することができます。」

これを読むと、ますます一度食して見たいと思う。アーティチョークはその次で良い。



 
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。