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マルク・シャガールの水彩画 [絵]

マルク・シャガール(Marc Chagall 1887年- 1985年、98歳で没)は、20世紀のロシア(現ベラルーシ)出身のフランスの画家。

妻ベラ・ローゼンフェルトを一途に愛し、ベラへの愛や結婚をテーマとした作品を多く制作している。1944年、57歳の時30年連れ添ったそのベラが亡命地のアメリカで亡くなる。
1947年フランスに戻り、1952年ユダヤ人女性ヴァランティーヌ・ブロツキー(1905年ー1993年)と再婚した。画家65歳と新婦47歳。「老いらくの恋」の成就である。二人の妻を題材に多くの絵を描いたことから別名「愛の画家」と呼ばれる。日本人にはシャガールが好きな人が多い。馬、鶏などの眼が好きだという女性ファンも数多い。2015年は没後30年、きっとシャガール展が開催されるにちがいない。

表現主義、シュルレアリスム、キュビスム、フォーヴィスムの画家と多彩に言われるのは生涯にわたり自分の絵を追求した証しでもあろうが、アマチュアには画風がめまぐるしく変化したピカソほどの振幅は無いように見える。シャガールは芯が変わらないというべきか、目指したものが生涯変わらなかったというべきか。

パブロ・ピカソは1881年生まれ。シャガールは彼の6歳下であり、同時代に生きた画家同志お互い意識し合っていたであろう。かたやキュビズムの創始者であり、シャガールもキュビズムともいわれるが表現主義、シュールレアリズムの色合いが強い。二人の絵は少し似ているところもあるが、似ていない方が多いように思える。

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ピカソは1943 年、62歳のとき21歳の画学生フランスワーズジローと同棲したのをはじめとして、1961年、80歳でジャックリーヌ・ロックと結婚 するなど「老いらくの恋」を楽しむ、に耽る、と言った方があたっているかも。
シャガールは敬虔なクリスチャン、ピカソは奔放で情熱的なスペイン男という感じだが、二人の共通点は長寿。
いっとき数人の女性を愛して修羅場を現出さえしたピカソも、92歳まで生きた。
シャガールは、1950年南仏コートダジュールに移住、ピカソとは対照的に2番目の妻と安穏な生活を得て、98歳の長寿を全うし、晩年まで絵を描いたという。
その晩年に描いた絵はどんな絵だったのだろうか、水彩画は描いたのだろうかというのが関心事の一つである。

シャガールの作品は油彩をはじめ、リトグラフ、壁画、ステンドガラス、陶芸など多岐にわたる。生涯の作品数は、2000点という。
うち水彩画はガッシュなどミックスメディアを含めて残されているものの、我々が画集で見られるのは20数点に過ぎない。
戦争の世紀を、迫害を受けながら生き抜いた画家だから、散逸した作品も多いので数は正確ではないだろうが、油彩、版画などと比べて、水彩画はごく少ないことは間違いなさそう。

好きな絵を(ほぼであるが)作成時順(年齢順)に並べてみた。


「Old Woman with a ball of Yarn」(1906 油彩 19歳 )「糸マリを持つ老婦人」。
わが画集で見ることのできた一番若いときの絵。

「Soldiers with Bread 」(1915 水彩 28歳)「パンを持つ兵士」パンを両脇に抱えたいかめしい兵士の顔が可笑しい。

「The Cemetery Gates 」(1917 30歳 )「霊園の門」。油彩か?空などは水彩のようにも見えるが。

「The Painter:To the Moon 」(1917 30歳 グワッシュと水彩)「画家:月へ」水彩はバックのブルーか。「シャガールブルー」はつとに名高い。しかも「シャガール浮遊」の始まりか。好きな絵。

「Equestrienne 」(1927 グワッシュ 40歳 )「女性騎手」。馬のお腹と騎手のお尻というか、ももというかその対応が愉快。シャガールは茶目っ気に溢れる。

「Scene design for the Finale of the Ballet 'Aleko' 」(1942 グワッシュ 55歳)
バレエ「アレコ」フィナーレのための場面デザインと訳せばよいのか。黄色のシャンデリア、バックの黒に下の赤い街と緑の森が映える。黒もただの黒ではなさそう。白い馬の目がシャガールらしい。

「Stil Life with Vase of Flowers 」(date unknown 水彩とインディアンインク)
紫色の使い方が、アマチュアに参考になる。インディアンインクというのは、どんなものか今度世界堂できいてみよう。




Self portrait with a Palette 」(1955 グワッシュとインディアンインク 68歳)
画家68歳にしては若々しい。再婚して3年後。画中のBibleはシャガールらしい。

「Song of Songs Ⅳ 」(1958 水彩 71歳)墨絵風の筆使い。滲んだ黒に黄色が合う。黒はランプブラックだと勝手に想像している。

「King David 」(1962-63 油彩 76歳)自分も、3年後こんな絵を描く気力と体力を持ちたいものだが、はたして。

「Jcob Wrestling with the Angel 」(1963 水彩 76歳 2枚ある)「ヤコブの天使との格闘」。聖書を題材にした、老境の水彩画を見つけた。
絵は、この写真から模写したもの。F2アルシュ。ブルーなどのドライブラシュ風なタッチが難しい。

image.jpg



「Jcob 's Ladder 」(1973 油彩 86歳)「ヤコブの梯子」画家米寿近くの作品。

「The dance of Myriam 」(1966 水彩 79歳)傘寿1年前だが、明るい良い絵だと思う。ミリアムは旧約聖書のモーゼの姉、預言者。女性の名前マリアはこのミリアムに由来しているという。画集ではこれが最高齢の水彩画かと思ったが、1975年 「Study to Vitrage at Tudeley All Saints' Church」というのが2枚あった。88歳米寿のときの水彩画。ステンドグラスか壁画のための下絵だろうか。

「Great Circus 」(1984 油彩 97歳 ) 最晩年の絵か。この力強さはどうだ。
ピカソの晩年の絵は線画が多くなっているが、シャガールはしっかりした絵、タブローを何枚も描いている。この絵も130×97cmと大きい。

シャガールは、晩年美しいステンドグラスを幾つか手がけている。ステンドグラスは、ガラス絵もそうだが水彩の透明感と共通するところがあるように思う。
あらゆる絵の可能性を追求したシャガールは光と影、透明感がことのほか好きだったに違いない。


 

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