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ホアキン・ トレンツ ・リャドの水彩画 [絵]

J.T.リャド(Joaquin Torrents Llado1946-93 )は 最後の印象派ともいわれたスペインの画家。47歳の若さで亡くなる。
スペインのバダローナ(カタロニア)で1946年生まれた。比べるのは変だが、自分より6歳下だから、日本でいえば終戦1年団塊の世代のはしりくらいということになる。
同じスペインカタロニア出身の画家には、ジョアン ミロ、ガウディ、サルバドール ダリもいる。抽象表現主義の画家アントニ タピエス(1923-2012)もこの地ではなかったか。
この国には、ピカソ、ゴヤ、ベラスケス 、 アントニオ ロペス 、エル グレコと画家の巨星が多い。考えてみれば凄い国だとあらためて思う。

リアドは1955年、バルセロナのアカデミア・バルスで絵を描き始め、1961~66年にはサン・ホルヘ高等学校で絵画を学ぶ。美術学校時代から多数の賞を受賞。1965年には、弱冠19歳で助教授に任命される。 まさしく神童、天才というほかない。

1968年(22歳)にマジョルカ島パルマにアトリエを設置。野外で 島の風景をスケッチ、アトリエに帰り絵を描く生活に入る。
マジョルカは西地中海の真珠と呼ばれる美しい島。 マヨルカとも。スペイン王室の避暑地である。 ジョアン ミロが 晩年に過ごした。また ショパンが結核となりジョルジュサンドをともなって、療養し「雨だれのプレリュード」を作曲した島として名高い。もっとも今はサッカーの方が有名か。

1990年(44歳)、日本での初個展開催。初のシルクスクリーン作品発表。 1992年、オランダ花のオリンピック“フロリアード1992" の日本公式ポスターおよび記念版画も制作した。
1993年3度目の来日個展開催。
同年大動脈瘤により47歳の若さで急逝。

リヤドの絵は、油彩、水彩も強烈な色彩と溢れる光と陰が特徴。とてもアマチュアの参考にならないような高度な技術のようだ。画像で見るとシルクスクリーンやジクレーのせいか油彩、水彩の区別がつかない。ということは水彩でも油彩と同じような迫力のある絵がかけるということになるのか。リヤドはなお、アマチュアの自分にも勉強すべきことが多い画家のような気がする。何か分からないが、得るものがあるように思うのだ。特に色彩に惹かれる。
ともあれ、絵を並べて眺めて見た。原画が水彩か油彩か判然としないのが残念だが。



「ためいき橋Ⅱ」(1991 水彩 )多くの画家の好んで描く風景。光と、その影である紫(!)が混じる水彩。紙の上で色彩は集り、散乱する。
「ソン・エスパセス公園の片隅」(1990 水彩)複雑な色彩の音楽。蔭にはたくさんの色彩が隠れている。
「ヴェネチア(トルセロ)」(1987)画面に文字が現れる。
「カネットの夜明け」(1991)代表作のひとつ。
マジョルカは、街並みや庭園にイタリアの影響を強く受けているという。
「アルファビア 」(1992 )
「ライの薔薇」(1994)
「カロリーナ アミーゴ嬢」(1995)
即興的な線と鮮やかな色が、光の中で輝き、しかも並外れたデッサン力を発揮した肖像画が多い。例えば、ほかに「バージニア・ロペス嬢」など。
「ロルカの詩Ⅲ」(1996)画面が枠で仕切られそこに詩が。
「薄明かりのヘネラリッフェ」(1997)



「キューガーデン」(1998)
「夕暮れのサンタ・マリア教会 」(クロモグラフ1999) 17.0x24.3cm。
クロモグラフは版画技法のひとつ。別名、イルフォクローム、とも。スイスチバ社が開発したのでシバクロームとも。通常の版画ともっとも異なる点は、版画が刷られているものが、紙ではなく、フィルムという点。技術的には、写真の応用。
「マリアとの自画像 」(ジクレー2003) 48.0x33.5cm。
 ジクレー「Giclee」とは、インクジェットプリンターで印刷された限定版画作品のこと。
原画を高感度スキャナでトレースするか、原画のポジフィルムをトレースし、色彩をコンピューターで最大数十万色に分解、解析する。
このデータを利用し超ミクロなサイズのノズル(噴射口)から紙やキャンバスに各色を噴射する技法。年賀状の「インクジェット用紙」の印刷法と同じもの。
非常に繊細な線のタッチ、微妙な色彩の変化、色彩の揺れなども逃さず再現することができ、現在最も原画に近い版画製作法といわれる。
「サンティ・ジョバンニ・エ・パオロ 」(ジクレー2004 )33.9x48.9cm。ヴェネチアにある大教会。ジョバンニは聖ヨハネ、パオロは聖パウロ。
「サン・マルコ広場 」(ジクレー2004)25.4x35.4cm
「ジヴェルニーのしだれ柳」(ジクレーonキャンバス 2009 )62×62cm。両脇に滝のように落ちる光の束の縦線、真ん中の水面の横線の美しい対比。好きな絵である。
ジヴェルニーというのは、モネの晩年の住まいがあった場所で名作「睡蓮」の舞台。
「プリマヴェーラ 」(ジクレーonキャンバス2011 ) 62×62cm。プリマヴェーラは春の意。ルネサンス期のイタリア人画家サンドロ・ボッティチェッリが1482年頃に描いた春「プリマヴェーラ」を知っている人は多いだろうが、この絵も、それとは全く別の美しさで人を魅了する。
「グランカナル 」(ジクレーonペーパー 2009) 19×27cm 。大運河。
「ジヴェルニーの想い出 」(ジクレーonキャンバス2011 )29.0×29.0 cm。
「アルファビアの朝」
「モナコの薔薇 」上掲「アルファビアの朝」とともに逸品。

にわか勉強だが、版画には版の形式と種類があるという。
木版(凸版)形式は 木口木版 と板目木版の二種類。
銅版(凹版)形式は、 ドライポイント エッチング アクアチント他が種類、石版(平版)形式 は リトグラフが種類 。リトは石のこと。孔版 形式の種類は 、シルクスクリーンといった具合。
最近のCPの進歩で、版画技法はこれらのアナログ版画を大きく変化させているようだ。
そのひとつがジクレーであろう。
画家は原画をスキャナーで取り込み、インクジェットで印刷部数限定で販売できるようになった。原画が水彩か、ガッシュかパステルかはたまた油彩かまでよくわかる。画家は原画を手元に置くことも出来、愛好家も複数者が楽しめるので便利なツールである。
反面、手彩色などの味は楽しめないが。

洪水のように奔流し、溢れ出んとする光と陰の色、点描、スパッタリング、ドロッピング、額縁のような画面の中の鮮やかな色による仕切りなどを駆使し、ときに文字や詩を書きこむリヤドの絵はジクレーがよく似合う。
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