SSブログ

三冊の猫随筆 [本]

image-20140816091808.png

我が家の猫も、冷房が嫌いである。冷房をつけるとそそくさと部屋を出てしまう。どんなに暑くても、冷房のないところで、あおむけになって曲げた両手両脚をあげてバンザイスタイルで寝ている。内猫といえどもネコには野性がまだまだ残っている。

当方は、熱中症回避のため冷房を適切につけて、猫の話を綴った猫随筆を読んでいる。猫の絵本や小説も多いが、猫談義の猫随筆も何とたくさんあることか。それだけ世に愛猫家が多いという証左であろう。
自分もこのブログで猫随筆集を取り上げたことがある。

関連記事 愛猫記
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/archive/201304-1

我ながらあきれるが、最近も一度に三冊も図書館で借りて来て読んだ。

最初の一冊は、「猫は神さまの贈り物 エッセイ編」(山本 容朗/編 有楽出版社 2014)。
谷崎潤一郎 、奥野信太郎、木村荘八 、 大佛次郎 、吉行淳之介などの猫エッセイ。 漱石の有名な猫の追悼句「此の下に稲妻起る宵あらん」の「猫の墓」も収録されている。
中国文学者で随筆家の 奥野信太郎 「養猫記」 に出てくる乞猫詩、 送猫詩 、贈猫詩の話や木村荘八の 「我猫記」(さすが挿絵画家、絵入りで味がある)が面白い。
「猫は神さまの贈り物」は「小説編」もあるそうだが、まだ読んでいない。

ニ冊目、「金井美恵子エッセイ・コレクション 2 1964-2013 猫、そのほかの動物」 金井 美恵子/著 平凡社。
エッセイ「遊興一匹 迷い猫あずかってます」ほか、小説「タマや」なども収録されている。
作家は、猫は家に付くというが、猫はおばさんにつくと喝破する。ミルンのプーに出てくるトラーと名付けたとら猫を飼っていた作家自身の経験をふまえているというが、猫おばさんなるものが存在するから妙に納得してしまう説だ。
また猫は、むろん外猫の場合だが、七軒の家を持っているともいい、極めて戦略的な生き方をしているという。とにかく氏の猫に対する観察眼は鋭く、考察が深いのに驚き感心する。

金井美恵子氏は1947年生まれの小説家、エッセイストだが、著書を読んだことも無いので恥ずかしながら存じ上げていなかった。「本を書く人読まぬ人とかくこの世はままならぬ」(日本文芸社/1989年)というエッセイを書いているらしい。パート2まであるとか。嗚呼。

作家の実姉で画家の金井久美子の猫の絵が楽しい。実物の可愛さがまだまだ表現出来ないと言いながら、作家と同居し、共同飼主らしく猫のしぐさを良く見ていて、さすがにうまい。この人の描くトラーは板にテンペラ(ただし、このエッセイコレクションの挿絵はモノクロ)だから水彩の一種。

三冊目は、「猫 クラフト・エヴィング商會プレゼンツ」 (2004年 中央公論新社 / 2009年 中公文庫)。
1955年に刊行された有馬頼義、猪熊弦一郎、井伏鱒二、坂西志保、滝井孝作、柳田國男など小説家らによるアンソロジー「猫」をデザイン編集及び追録したもの。
小説家ではないけれど、戦後GHQ顧問として活躍した米国通の評論家、坂西志保の「猫に仕えるの記」「 猫族の紳士淑女」が面白い。

クラフト・エヴィング商會(craft ebbing & co.)なるものも知らなかったが、吉田篤弘、吉田浩美による、作家、装幀家のユニットだそうである。
商会名は稲垣足穂(1900-77)の文章中の「クラフト・エビング的な」という表現に由来するというが、クラフト・エヴィングはドイツの精神科医。少し変わり者の小説家タルホがどういう意図で精神科医の言葉を使ったのか知らないので、由来のもともとは自分には分からない。

商会により追録されたのは「忘れもの、探しもの」と題するシンク(Think)なる謎を運ぶ黒猫の話、というより絵本風の一篇。何やら猫の絵も添えられた文章も謎めいて、ほんわかと楽しいおまけである。

人の書いた猫随筆集を読んで思うのは、猫は世界各地で似たような暮らしをして、当たり前ながら万国共通の性質を持つが、一方で個体による性格などの差異は随分大きいということである。その点でも猫は人間と同じだ。人の語る猫の話を読みながら、我が家の猫を比べて見てしみじみとそう思う。猫は冷房嫌いだが、その度合いは猫によって違うのだろう。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

手づくりイーゼル寺田寅彦 の猫随筆 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。