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富永太郎の水彩画と立原道造のパステル画(1/2) [絵]


絵を描く詩人は多い。このブログでも外国人では、ヘルマン・ヘッセ、ウィリアム・ブレークを、日本人は小熊秀雄、村山槐多 、難波田龍起、西脇順三郎などの水彩を見た。詩画ニ道に秀でた人は、他にも高村光太郎、宮澤賢治、草野心平、ジャン・コクトーなど沢山いられる。蕪村もそう。
詩と絵画には共通点があるのだろう。詩を作らない画家でも絵に詩情を込めて描き、絵を描かない詩人でも絵を脳裡に描き詩を詠ったのであろう。

今回は富永太郎と立原道造の二人を取り上げる。二人とも24歳の若さで亡くなった。富永は画家志望で本格的な油彩画などを描いた。立原は建築家でもあり絵はパステル。

富永太郎は、1901年(M34)東京文京区生まれ。大正、昭和初年活躍した詩人、で画家である。
1925年(T14)肺結核で夭折。24歳だった。
父は愛知県士族で鉄道省勤務の富永謙治(後に青梅鉄道社長)、 母・園子は国語教師。

府立一中から仙台の二高へ。府立一中では一級下に正岡忠三郎、小林秀雄が。正岡忠三郎は子規の妹、律の養子。太郎の終生の友。はてどこかで聞いた名と思ったら、司馬遼太郎の長編小説「ひとびとの跫音」(1981中央公論)の主人公、阪急電鉄、百貨店の社員。この小説は読んだがすっかり忘れている。

仙台では、8歳年上の人妻との恋愛問題で二高を中退する。東京外国語学校仏語科に入学するが、不眠症や頭痛に悩まされ、出席日数不足で1923年(T12)に留年した。その時休学し川端龍子の画塾に通う。上海への旅を経て画家として立つことを決意して、菊坂絵画研究所で学んだ。

1924年(大正13年)6月、京都帝大に在籍する正岡忠三郎(二高で同学年)を訪ねて京都に滞在。このころ、立命館中学の4年に在籍していた中原中也(1907ー1937)と知り合う。中原は富永の6歳下になるやはり結核性脳膜炎により30歳で逝去。

中原の代表作は、「山羊の歌」(1934)「在りし日の歌」(1938)。自分は、「汚れつちまつた悲しみに 」くらいしか詩句を知らないが、今でも人気がある。富永、立原らと同時代の詩人。中也の絵は無いようだ。

中也に「夭折した富永」(山繭)がある。中也は酒癖が悪く仲間に嫌われたが、富永ともうまくいっていないことが窺える文だ。

「そして今彼に対面する者は、彼をただ友人とのみ考へるなら、余りに肉親的な彼の温柔性に辟易しなければならない破目になるだらう。さしづめ、彼は教養ある「姉さん」なのだが、しかしそれにしては、ほんの少しながら物質観味の混つた、自我がのぞくのが邪魔になる。 友人の目にも、俗人の目にも、ともに大人しい人といふ印象を与へて、富永は逝つた。そしてそれが、全てを語るやうだ。」

image-20150107091835.png

富永太郎の絵を見よう。水彩画も何枚かある。いずれも詩人が、その内面を表現しようとした絵のように見えるのは先入観の故か。
「風景 」(1917 水彩)
「万国旗のある風景 」(1923 水彩)
「自画像 」(1921 油彩)
「上海の思い出 」(1924 水彩 と油彩)水彩は油彩のためのデッサンであろう。
「コンポジション」( 1924油彩)
「Promenade 」(木版画 1923)
「自画像 」(1924 油彩)

富永太郎の詩は青空文庫で読むことが出来るが、詩を学んだことのない自分には、残念ながら良さがわからぬ。大江健三郎ら戦後を含めて、多くの文学者はその影響を強く受けたというのだが。

秋の悲歎
 私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる。戦慄は去つた。道路のあらゆる直線が甦る。あれらのこんもりとした貪婪な樹々さへも闇を招いてはゐない。
橋の上の自画像
今宵私のパイプは橋の上で狂暴に煙を上昇させる。今宵あれらの水びたしの荷足はすべて昇天しなければならぬ、頬被りした船頭たちを載せて。

画家の午後
雪解けの午後は淋し
砂利を噛む荷車の轍の音遠くきこえ
疲れ心地にふくみたる
パイプの煙をのゝく
室ぬちは冬の日うすれ
描きさしのセント・セバスチアンは低くためいきす。
電燈のとぼるを待ちつ
われは今 わが心の洞を眺む。

これらの詩を読んで、絵を心に浮かべることは自分には至難だ。しかし、人は詩を読んで何かを感じる。書き手の感情と同じものとは限らないとしても。同じように、絵も見てその中に詩を読むとは限らぬが、人は何かを感じる。描き手の表現したかったものと違うかも知れないが。
次回は立原道造のパステル画を。

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