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白鷺35年 [随想]

西多摩は東大和市の新興住宅地から中野区の白鷺(しらさぎ)という町名の町に引越したのは1980(昭和55)年だからもう35年になる。
40歳不惑の年の決断。子供13、8、2歳。証券の仕事が朝早く夜遅く、遠距離通勤が身体にきつくて音を上げ、家族会議にかけたあげくの転居だった。

町名の白鷺(3丁目まである)は、実態、実相とはおよそかけ離れていると思うのだが、まことにエレガントではある。
この町名は、1965(昭和40)年の住居表示施行によりつけられたもので、昔からあったものではない。住居表示前の旧町名は鷺宮である。今も白鷺に隣接して鷺宮(6丁目まである)は残っており、その北に上鷺宮(5丁目まである)という町名がある。
つまり白鷺は「南鷺宮」あるいは「下鷺宮」と命名しても良い位置にある。
鷺宮が大きくなりすぎ分離するにあたって、「鷺」か「宮」のどちらか1文字を残したいという住民の要望が強かったという。町域内に福蔵院なる寺がありその山号が「白鷺山」であったこともあって採用されたようだが、何より語感や文字面が良かったからであろう。

例えば、合併して西東京市となり保谷市と田無市という、由緒ある地名が消えてしまったのは残念だが、当地のこの場合は分離なので旧地名鷺宮という町名は残った。まずはめでたい。
今年はこの町名「白鷺」がつけられてから50年、ということになる。

福蔵院は真言宗豊山派。西武新宿線鷺ノ宮駅(駅名は何故か「ノ」が入る)のすぐ近く、妙正寺川のほとりの閑静な住宅街の中にある。隣接して鷺宮八幡神社があり、明治の神仏分離までは福蔵院が別当を務めていたという。つまり寺はいわゆる神宮寺で神社の運営管理をしていた。
開山の頼珍法印が大永元年(1521)に亡くなっているので、「新編武蔵風土記稿」では文亀・永正(1501~21)の頃の創建と推測されているというから、かなり古い寺だ。
山門の近くに都内には珍しい立像の「十三仏の石仏」がある。

この地鷺宮地区は中野区の北東部に位置するが、近くの地名が井草、沼袋、阿佐ヶ谷、荻窪など谷や低地を現しているように川、湿地が多く昔から鷺が多く棲み飛んでいたので山号を白鷺山とつけたのだろう。

さて、その鳥の白鷺を近くの妙正寺川や公園の池でも見たことがない。三、四年前、息子夫婦が住む小金井近くの野川を散歩したときには見たのだが。

白鷺は、全身が白いサギ(コウノトリ目サギ科)類の総称で、日本ではダイサギ・チュウサギ・コサギ・カシラサギを指すとネットにある。野川で見たのは小さかったから、たぶん留鳥コサギと思われる。沖縄ではクロサギの白色型がこれに加わる。アマサギも入れられることがある。白鷺は音読して「はくろ」とも言うとか。
シラサギという名前のサギがいるわけではなく、大きさや足指の色、冠羽の有無などで識別することとなる。
なお、ゴイサギ(五位鷺)は、近くの善福寺川緑地公園で見たことがあるが、こちらは灰色でペリカン目サギ科ゴイサギ属に分類される鳥類。コウノトリ目の白鷺とは違うようだ。


歳時記では、白鷺は夏の季語。
「サギ科の白い羽毛に覆われている鳥の総称で、大鷺中鷺小鷺があり、前二種は渡り鳥、小鷺は留鳥。いずれも初夏から巣を営む。沼沢や水辺を渡り歩いて餌をあさる渉禽で、形は鶴に似ているが、小さい」と、過不足なく記されている。例句は、

白鷺の佇つとき細き草摑み  長谷川かな女
美しき距離白鷺が蝶に見ゆ  山口誓子
白鷺の風を抱へて降りにけり  西山睦
白鷺のみるみる影を離れけり  小川軽舟 など。


眼裏に白鷺を見て暮らしをり(杜 詩郎)

わが句は、35年間白鷺で暮らしていて一度も白鷺を見たことがない、というだけのもので駄句そのもの。まなうらにしらさぎをみてくらしをり 。

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ここから先は、たあいもない例の脱線、余録。とことわるのは、このブログ自体が余談、余録だから、我ながら変ではあるけれど。

・白鳥(はくちょう)も白鷺に似てオオハクチョウ、コハクチョウなど7種の水鳥の総称。ただしこちらはカモ科。首の曲がり具合などをみると容姿はこちらに軍配か。
白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ(牧水 歌集 海の聲)のしらとりは、しらさぎ、はくちょうでなくカモメだろう。

・五十年以上前、八丈島へ行ったときに乗った飛行機の機体のニックネームがデ・ハビランド・ヘロン だった。「ヘロン」は「鷺」の英名heronである。ちなみに鶴はcrane(クレーン 、起重機)。コウノトリはstork。

・姫路城の別称は「白鷺城」、「はくろじょう」と読む。八代城の別称も白鷺城だが「しらさぎじょう」と読む。いずれも羽を広げた白鷺に似ているところから。前者は見たことがあり、白壁を含めさもありなんと思うが、九州で2度、通算して3年間暮らし熊本八代も行ったことがあるのだが、城を見た覚えがない。

・名古屋金沢間を走る特急は「しらさぎ」。北陸新幹線の東京ー金沢間を走る「はくたか」より優しい感じ。

・羽を広げて飛ぶ白いサギに似ているとして、ネーミングされた鷺草(サギソウ和名)というのがある。ラン科の多年草。環境省により、レッドリストの準絶滅危惧の指定を受けている。

・神社や寺で行われる白鷺の舞。鷺舞の神事は京都・八坂神社の祇園祭りが起源で、千百年以上の昔から悪疫退散の為に奉納伝承されたもの。各地の寺社で鷺の衣装を纏い優雅に舞い踊る。

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