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アルマ・タデマの水彩画1-Dolce Far Niente 甘美な無為 [絵]

ローレンス・アルマ=タデマ(Lawrence Alma-Tadema, 1836 - 1912 76歳で没)は、イギリス、ヴィクトリア朝時代の画家。
同じヴィクトリア朝の画家だがアルマ・タデマはウォーターハウス(1849ー1917)とともにアカデミー側の画家であり、反アカデミーのラファエル前派に分類しないのが一般的だそう。
サーが付いているので、なるほど体制派かと納得する。日本で言えば黒田清輝か。

自分はこの画家を殆ど知らない。「シャロットの女」や「人魚」(漱石の「薤露行」、「三四郎」にそれぞれ登場する)などを描いたJ・w・ウォーターハウスは知っているのだが。

漱石の水彩画http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-05-09

よって「サー・ローレンス・アルマ・タデマ」ラッセル アッシュ著 (トレヴィルブック社1993 )を借りてきて読んだ。以下は、ほぼこれを参考にさせて貰っている。

アルマ・タデマは古代ローマ、ギリシャ、エジプトなどの歴史をテーマにした写実的な絵を描いた。それらの絵は舞台装置やハリウッド映画の初期歴史映画などに多大な影響を与えたと言われる。

アルマ=タデマは、オランダに生まれ、パリに移住。ドイツ諸邦とフランスとの間に普仏戦争(1870-71)が起き、それを逃れてイギリスに帰化した。
1863年、33歳の時にフランス人女性ポーリーヌと結婚。新婚旅行でポンペイを訪れて、その建築や調度品に感銘を受けて以来、古代ローマなど歴史を題材にした絵画を数多く描いた。
古典主義的主題に、ヴィクトリア朝時代らしく繊細な感受性や官能を美化して描いた作風は、当時からイギリス内外で人気を博した。
古代の建築物や装飾品、生活や風俗を、緻密に正確に描いたので「建築の功績」に対し、1906年には王立建築学会から、ゴールド・メダルを授与されたというから半端ではない。
建築物だけでなく、当時の衣装を纏った人物像には気品に満ち、青い海、白い大理石、鮮やかな花々も美しく、全体に装飾的に描かれているのが特徴である。
一方で絵の精神性の欠如、甘い感傷性、あまりにデテイルへのこだわり過ぎなど否定的な評価もあり、没後一時は忘れられた時代もあったが、現代では高い評価が与えられ人気も高いという。

アルマ・タデマには、水彩画がかなりあるが、大きさからみても、油彩の下絵か、エスキースと見られる。が、アマチュアからみてもどんな技法で描いたのかと思わせる力作も多く、タブローとしてみても面白い。

「The Massacre of the Monks of Tamond僧侶の虐殺 」(1855 w g)
(制作年数字の後のwは水彩、gはガッシュ 、oは油彩、bはボディカラー以下同じ表記)

image-20160617085326.png

「Faust and Marguerite ファウストとマルガレーテ 」(1857 w ) 23歳の作品。マルガレーテはファウストの恋人。ご存知、ゲーテの戯曲「ファウスト」から。

「Fredegonda at the Deathbed Praetextatus 」(1864 w )22.7 ×29.8cm。フレデグンダは、キルクペリク1世の妃。

「An Exedra エクセドラ」(1871 w )左にパラソルを持った男が座っている。エクセドラは建築用語。本来は脇につけられた座席の意。古代では住居の談話室,ギリシャ風神殿の中庭や公共建築として用いられた長方形の広場の端部に半円形に突き出した部分をいう。そこに腰掛が配され談話したりする場所となった。

「Music Hath Charms」( 1873 w )ギリシア神話に登場するダブルリードの木管楽器アウロス(と思われる)を吹く男。

「A Roman Artist ローマの芸術家 」(1874 w )バックの絵はローマ艦隊か。ローマ時代のカンバスが面白い。

「Charles Deschamps ,With Henry Wallace Looking On (detail ) 」(1874 w)

「Flora,Spring in the Garden of the Willa Borghese 花 庭の春 」(1877 w)
ローマのヴィラ・ボルゲーゼの庭園を舞台にした、四季の連作の一つ。
この作絵画の右奥には、遠くて見えにくいが大理石のベンチに腰をおろした女性と、頬杖をついた男性が描かれている。画家はこの情景を独立した作品として、1883年(6年後)に後掲「クサンテとパオン」を、左右反対の構図で描いた。また、「A Declaration 告白」(1882 w)も同じ構図でありよほど気に入ったものと見える。

「Stirgils and Sponges 」(1879 w )Stirgils ストリギルは、肌かき器。ブロンズの道具らしい。右側の女性が左手で持ち、自分の右腕を洗っている。手前にはスポンジ(海綿)が置いてあり、絵のタイトルになっている。これも体を洗うもの。

image-20160617085403.png

「Pandora パンドラ 」(1881 w)パンドラは、ギリシャ神話中の人類最初の女性。開けた箱の中から病気、貧困、戦争、犯罪、嫉妬、憎悪、老いが出たが、奥に希望が一つだけ、あったという有名な故事がテーマ。

「Roses ばら 」(Date unknown )水彩と明記されていないが、たぶん水彩スケッチであろう。

「Between Venus and Bacchus ヴィーナスとバッコスの間 」(1882 w )噴水の彫像、右上にヴィーナス、下にバッコス。その間にタンバリンを持つ少女が水を飲もうとして噴水に顔を近づけている。左の女性が掲げているのは松ボックリの飾りのついたバッカスの杖。随分説明調のタイトルではある。

「Dolce Far Niente 甘美な無為 」(1882 w )題訳はこれで良いのか、無聊、アンニュイとかか、自信は無い。イタリア語か。フェデリコ・フェリーニ監督のイタリア映画「甘い生活」の原題は「La dolce vita」(1960)だった。絵の女性はなにやら忘我の境。サイズは不明。
「A Female Figure Resting やすむ女性」(1882 o ) 油彩は意外に23.5×15.9cmと小さい。
右手に薔薇を持ち、左右反対であることを除けば全く同じ絵なので割愛したが、ほかに2枚あった。こちらはいずれも油彩とあるが、一枚は水彩のようにも見える。
ちなみに題名だけ記すと、<「 Resting 休息」 (1882 o)と「Daydreaming 白昼夢 」(1882 o )23.0 ×16.5cm。>である。

「A Declaration 告白」(1882 w)愛の告白。大理石のベンチに腰をおろした女性と、頬杖をついた男性の構図を、アルマ=タデマは好んで描いている。後掲の「クサンテとパオン」と同じ。

「A Street Altar 街路の祭壇 」(1883 w ) 街角にある小さな祭壇を掃除している若い女性。左側に笛を吹く男性は月桂樹を冠る。大道芸人か。

次回も引き続き水彩画と若干の油彩画を。
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