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リ・ポーの不透明水彩画 [絵]

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今年のわが水彩のおけいこ史に残るヒットは、不透明水彩(Gouache )の1日講座に参加したことである。いろいろ考えさせられることがたくさんあった。透明水彩(Watercolor)の理解にも大いに役立ったように思う。

その時、ネット画集でガッシュ作家にはどんな人がいるのだろうと探したらヴェトナムのリ・ポーが出てきた。知る人ぞ知るのであろうが、不学の自分ははじめて知った。
ガッシュを使う画家は多い。とくに油彩画家はパステルと同じく素描の画材として使うようだ。しかし本制作にこれを使う画家は、(日本に中西利雄などがいるが)リ・ポーの他にあまり知らない。

リ・ポー(Le Pho )は1907年生まれ(2001年に94歳で没した)ヴェトナムの画家である。
生年の1907年は明治40年、日本水彩画の先駆者浅井忠が51歳で没した年である。1904年に開戦した日露戦争が2年前に終結している。
マンダリン二世の家に生まれたというから、中国系なのであろう。
18歳でハノイのエコール・デ・ボザールで5年間学び、その後2年間パリのエコール・デ・ボザールで学んだという。
フランスのヴェトナム侵略は1847年にはじまり、植民地としては1887年から第二次世界大戦終戦まで仏領印度支那連邦として続いたからフランス文化の影響は大きい。

リ・ポーは自らの教育を修了した後ベトナムに戻り、エコール・デ・ボザール(Ecole des Beaux-Arts)で4年間教えた。その後、1937年に国際博覧会の代表としてパリ​​に戻る。ま彼はまた、この展覧会の審査員の一員として勤務したという。
彼は30代と40代の間、ヨーロッパとアジアで幅広く旅する。この時彼は、水彩を細長いブラシでシルク(絹)に描いている。
彼の絵の主題は鳥、竹、蓮の花などの静物画、家族の肖像画、ヴェトナムの風景画などであり、これらは伝統的にアジアのもの(Asian)だった。
彼の作品はピエール・ボナール(Pierre Bonnard 1867年 - 1947年 80歳 歿))とオディロン・ルドン(Odilon Redon1840年-1917年 76歳没)の影響を強く受けているとされる。
ルドンは水彩画の巨匠ギュスターブ・モロー(1826-98)の影響を受けているが、リ・ポーがそのルドンから影響を受けたというのは大変興味がある。また、ボナールはジャポニズムや墨絵など中国絵画などの影響を受けたとされるから、その観点でリ・ポーを見ると面白い。

ルナール博物誌の挿絵 http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-03-12
オディロン・ルドンの水彩画 http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-09-26
オディロン・ルドンの水彩画その2 http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09

しかし、リ・ポーは繰り返してベトナムの女性を描いているが、ほとんどの場合、シュルレアリスムの影響を想起させる細長い図形として描かれ独自の画風を持っている。
リ・ポーの絵は、アマチュアの目で見ると大きく二つに分かれる。ひとつは「茶を注ぐレディ」に代表される黒っぽい色調が多い人物画(シュールだ)と鮮やかな明るい花を主体にした絵である。
前者は線が目立ち、後者はそれが少なくて色彩が豊か。こちらは花だけのものもあるが人物がともに描かれているのも多い。

Elegant Lady Pouring Tea「茶を注ぐレディ」は、リ・ポーの代表作のひとつと思われるが、ネットでは例えば次のサイトで見られる。

https://www.wikiart.org/en/le-pho/elegant-lady-pouring-tea
ここには次のような表記があった。
Style: Post-Impressionism
Genre: genre painting
Media: gouache, ink, board, silk
Dimensions: 45 x 61 cm

花の絵の一例。人物画とは、かなり趣が異なる。不透明水彩らしく穏やかな華やかさだ。激しい色彩のルドンの花より静か。

https://reneelammers.com/blog/40707/february-26-2012-painter-le-phos-floral-paintings-and-creed


彼がなぜ主たる画材としてガッシュを選んだのか、おおいに関心があるがネットでもリ・ポーに関する記述自体少なく未だ知ることが出来ていない。
リ・ポーの絵は著作権が消滅していないので掲載せず、下手な感想など述べられないのが残念であるが、WikiArtやPinterest で検索すれば素晴らしい作品を容易に鑑賞できる。
肖像写真はウィキペディアから拝借した。


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