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平成二十九年 丁酉歳旦三つ物 [詩歌]


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むかしといっても、江戸時代であろうか、連句が盛んだった頃、正月や慶事があった時に第三までの三句を三つ物といって詠んだと知った。そこで自分も我流で2005年頃から作って愉しんでいる。
今年も歳旦三つ物をつくった。俳句、連句、短歌にしろ定型詩というのは、つくりやすいという側面があるが出来たからといって、良いものになるという保証はない。自分の場合大抵は良くない。加えて歌仙の独吟は文字どおりの独りよがり。以下のごとく解説をつけても余人には理解しがたいだろう。

平成二十九年 丁酉歳旦三つ物
発句 沼袋井草繁や鷺ノ宮
脇 まなうらに見るしらさぎの舞
第三 今朝のジムヨガ瞑想で始まりて

東京は中野の白鷺なる地名のここに、同じく都下の東大和市芋窪なる地から引越してきて早くも36年余の月日が流れた。
白鷺と芋窪では地名の雅さにおいて落差がある。芋窪という地名は自分が新興住宅地の分譲地を購入した時にはすでに上北台という地名に変わっていたが、聞くところでは由緒ある地名なのに変えたという。地価を上げようとする魂胆が透けて見える。
白鷺もその類いであろうと調べたら、鷺宮という地名があって人口が膨らみ、鷺宮から分離したとき、当時すでにあった白鷺八幡神社の別当寺南蔵院の山号が白鷺山だったことから、白鷺という地名にしたらしい。
まぁ許せる範囲か。自由が丘、ひばりが丘などよりましというもの。統合、合併などでつけられる新地名が生まれる一方、由緒ある地名が消滅するのはいただけない。西東京市が出来て田無や保谷が消えた如くに。

参考記事 「白鷺35年」
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2015-12-23

西武新宿線沼袋駅と上下井草駅の間に鷺ノ宮駅がある。わが最寄り駅になるが、中央線だと阿佐ケ谷駅になる。周囲の地名から容易に想像できるように、ここがかつて低湿地だったことを示す。近くを妙正寺池を水源とする妙正寺川が流れ、やがて神田川になる。

上記のブログで白鷺なる地に住んで長いが、白鷺を見たことはないという意味だけの駄句を詠んだ。
眼裏(まなうら)に白鷺を見て暮らしをり

今年の歳旦三つものは、これを発句の初案にしたが、脇以下のあとが続かず低湿地だから藺草も繁っていたであろうと、駅名を並べ雰囲気だけを詠んで発句とした。

発句 沼袋井草繁や鷺ノ宮
「藺草刈る」が夏の季語という。別案「沼袋藺草刈り干す鷺ノ宮」もお宮の座敷用の畳藺草をイメージできて捨て難かったが、シンプルに「繁や」とした。

脇 まなうらに見るしらさぎの舞
初案の駄句(五・七・五)を短句(七・七)になおしたが、鷺ノ宮と白鷺がつき過ぎ。同字を避けてしらさぎを平仮名にしても修正ができぬ。他に代案が浮かばず、不満ながらやむなく採用。

第三 朝のジムヨガ瞑想に始まりて
10年近く通った鷺宮フィットネスクラブが老朽化を理由に閉鎖してしまい、隣の下井草駅前のジムに移って7ヶ月になる。
週2ないし3回行くジムでは、スローヨガ45-60分のプログラムに参加するのがメイン。あとはたまに筋トレ、プール。
第三は大きく転換するのが理想(特に発句と重なるのは禁忌…後戻りしてしまう)ながら、これでは白鷺の地からいくらも出ていない。
最近すっかり出不精になり、引き籠もっている我が身を歌っているようだ。

ところで、昨年も「二十八年丙申歳旦三つ物」をつくった。

発句 金婚や持ち重りする薔薇の花
脇 冷房きかせ聴くクインティット
第三 水彩画かくも長きに愉しみて

「持ち重りする薔薇の花」は丸谷才一の小説の題名から。我ら「金婚」によく付くのではとそのまま拝借した。小説のテーマは四重奏団(カルテット)のメンバーの確執、葛藤を描いたもの。当方は金婚なので五重奏(クインティット)にしたところがミソ(冷房をクーラーと読み、か行の句でもあると自画自賛)。
これも解説をつけても他人には理解困難だが、(心臓で)年賀状に添えた。お稽古中の静物画、薔薇の花の水彩画をつけて。

参考記事「二十八年歳旦三つ物」
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10

さて、今年の年賀状に三つ物を添えるとしたら、絵は何が良いか考えた。そうだ、あれだと思い出したのが、J・オーデュボンの白鷺の水彩画。模写のお稽古にもなる。
オーデュボンはたくさんの鷺類を描いている。
中でも有名なのが、「Great Egret 大白鷺」(1821 Watercolor,graphite,ink ,and chalk on paper)で、これを添えたいものだ。この辺は良し悪しは別として、連句的発想である。

オーデュボンの「大白鷺」の原画は紙に水彩、グラファイト、インク、チョークとされるが、ある雑誌の記事では水彩、石墨、グワッシュ、パステル、白色顔料、黒インク、黒チョーク、紙とある(芸術新潮 2013年6月号) 。いずれにしろ驚異のマルチな画材を駆使した絵だ。オーデュボンの代表作の一つ。

ジョン・ジェームズ・オーデュボン( John James Audubon, 1785- 1851 66歳没)は米国の画家・鳥類研究家。北アメリカの鳥類を自然の生息環境の中で極めて写実的に描い
た博物画集の傑作「アメリカの鳥類」(Birds of America, 1838年)によって知られる。

参考記事「オーデュボンの水彩画」
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01

当方の模写は、水彩と鉛筆、ボールペン(白)。細い白い羽は烏口でマスキングし、白のぼかしにパンパステルを使ったりしたが、およそ二百年前のオーデュボンの足もとにも及ばぬ出来になった。紙はウオーターフォード(F4)。

何はともあれこの歳になると、今年も昨年に続き、下手な絵と歳旦三つ物ができて年賀状が出せたことは、誠に幸いであるとしみじみ思う。

受け取ったひとが「ん?」という顔をしているだろうことはまちがいないが。


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