ウィリアム・メリット・チェイスのパステルと水彩画

ウィリアム・メリット・チェイス（William Merritt Chase 1849– 1916 67歳で没）は、アメリカの印象派の画家。インディアナ州生まれ 。ジャポニスム作品が多いことでも有名。

ジョン・ヘンリー・トワットマン（John H. Twachtman1853-1902 48歳）やフレデリック・チャイルド・ハッサム（Childe Hassam 1859～1935 76歳）らと同じ19世紀後半に活躍した。

トワットマンについては、ごく最近このブログでも書いた。

ジョン・ヘンリー・トワットマンのパステルと水彩画

http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15

なお、ハッサムは、1886年パリに留学、モネに学ぶ。89年ニューヨークに戻り、 97年、J・オールデン・ウィアー（1852-1919）らと全米芸術家協会から脱退。印象派有志10人からなるテンアメリカの一人。

画家のチェイスは「Chase School」 (パーソンズ美術大学 "Parsons The New School for Design" )の設立者で教育者でもあった。

芸術の自由を求める革新的なアーティストのグループを率いていた後の初期アメリカンモダニズムの若き才能の マースデン・ハートリー（Marsden Hartley 1877-1943 66歳）や アメリカの孤独を描いたエドワード・ホッパー （1882-1967 84歳 ）なども チェイスの下で学んだ。

まずは水彩から。チェースの水彩はパステルより少ない。




「Topaz Grapes 黄玉ぶどう」（1870 水彩 ）21歳の作品。
「Portrait of a Man 男の肖像 」（1879 水彩）
「A Portrait Study 肖像習作 」（1880 水彩）
「Back of a Male Figure 男の背中」（1885 水彩）
「Mrs.Chase as the Señorita セニョリータに扮したチェース夫人」（1886 水彩）
「On the Beach,Shinnecock シネコック海岸 」（1895 水彩）
「Books and Candle 本とろうそく」（Date Unknown 水彩）
「The Potato Patch (Garden Shinnecock ) ポテト 畑（シネコック庭園）」（1893 水彩）

ほかに「A Lady in Black 、aka The Red shawl黒衣の婦人、別名赤い肩掛け」（1883 watercolor）という謎めいた不思議な水彩画を見つけたが、アマチュア（自分のこと）の参考になりそうもないので割愛した。

次にパステル。
チェースのパステルを眺めていて、気づいた特徴をランダムにあげると、
①パステルのみが多い。ミックスメディアがない。
②タブローが多い。
③サイズの大きいのもある。
④人物（肖像画、ヌードなど）風景、静物（花）、風俗画などほぼ全てのジャンルにわたっている。しかし、油彩で執拗に描いた魚（静物）は、なぜかパステル画が見つからない。
⑤1883年（34歳）〜1900年（51歳）短期間に集中して描いたよう。油彩は晩年まで描いているが、パステルはない。
などであるが、パステル稽古を始めた自分にも参考になる絵が多い。（なお、掲げたものはパステルとことわっていないものもあるが全てパステルである。）




「Dutch Canal (aka Canal Path Holland ）オランダの運河（別名オランダの運河小径) 」（ 1883 パステル）
「Flowers 花 」（1883 パステル）
「May I Come in 入っていい？」（1883）
「Sketch on a Young Girl on Ocean Steamer船上の少女 」（1883）
「Self Portrait 自画像」（1884 ）画家35歳。
「In the Garden 庭で」（1885 ）
「Lady in White Gown 白いガウンのレディ」（1885）175.26×99.06cm。大きいパステル画。
「Meditation (Portrait of the Artis't Wife)黙想 (画家の妻の肖像）」（1885 ）67.31×51.44cm。
「Reflections (aka Canal Scene反射光、別名 運河風景)」（ 1885）




「Portrait of Mrs.Chaseチェース夫人の肖像 」（1886パステル）
「Sunlight and Shadow in Prospect Park 日光と影公園の眺望」（1887）
「Afternoon by the Sea 海辺の午後 」（1887）
「Back of a Nude 裸婦の背 」（1888）滑らかな肌は、パステルでどう描くのか。
「Good Friends 親友」（1888 ）pastel on paper, mounted on linen 121.92 ×121.92cm。大きい。
「Nude Resting 休む裸婦」（1888 ）pastel on paper, laid down on canvas 73.66 ×60.96cm。これも輝く肌は一体どうやって描くのか、知りたいものだ。
「Still Life Brass and Glass真鍮 黄銅とガラスの静物」（1888 ）
「I am going to see Grandma(Mrs.Chase and Child)おばあちゃんに会いに行くの（チェース夫人と子ども）」（1889 ）
「Making Her Toilet 化粧 」（1889 ）縦長、着物、団扇、ジャポニスムだ。




「Mrs. Julius Gerson ジュリアス ・ガーソン夫人 」（1890パステル）
「Hall at Shinnecock シネコックのホール」（ 1892 ）
「Gray day In Spring 春のグレー デイ 」（1894 ）灰色の日でなく晴天に見える。
「A Summer Day 夏の日」（1895 ）
「Shinnecock Hills シネコックの丘」（ 1895 ）
「The Pink Bow ピンクのリボン 」（1895 ）
「Peonies 芍薬 」（1897） 牡丹も同じpeonyだが、どちらか。
「Portrait of Mrs.William Chase ウィリアム・チェース夫人の像」（1900 ）画家 51歳。
「The Garden Wall 庭園の壁 」（Date Unknown ）

エドガー・ドガのパステル「スター 」は、1878年の作品。この頃、印象派、新印象派のあいだでパリを中心に、パステルがあらためて見直され、「神が天国からほほ笑みかけ、パステルは鎖をはずし空に舞い上がった」と言われる。
同時期、アメリカの印象派の画家も盛んにパステルを描いたのだと、チェースのパステルを見るとわかる。しかも油彩の迫力に負けぬパステル画が多いように思う。