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ワイエスファミリーの水彩画(4/4終)ー三姉妹画家の系譜 環境か遺伝か? [絵]

NCワイエスは、2人の男子(A.ワイエスがその1人)と3人の女子に恵まれた。三姉妹とも画家となり、そのうちのニ人が画家と結婚して子供がいる。その子供達の多くが画家に成長した。(ワイエス・ファミリーツリー参照http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2014-05-30

ここでは三姉妹、その夫、子供、さらにワイエスからは4世代となるその子達の絵を見たい。



まずNCワイエスの長女ヘンリエッタ・ワイエス(Henriette Wyeth 1907-1997) 。
夫は画家のピーター・ハード(Peter Hurd )。二人の間に生まれたカロルとミカエルの2人の子が画家となる。
ヘンリエッタは、幼時ポリオを病み人差し指と中指の間に絵筆を挟み絵を描いた。NCの望みに反し、夫とともに遠い ニューメキシコの谷に移り住む。
ヘンリエッタの水彩画は見つからなかった。油彩2点。
「レディの肖像Portrait of Lady 」(1947 oil )
「ポピーのある静物 Still life with Poppy」( 1947)

ヘンリエッタの夫 、ピーター・ハード(Peter Hurd 1904-1984) 。
著名なNCワイエスから絵を学び、後にその長女と結婚する。ハードはイタリアルネッサンスのメディウムであるエッグテンペラ(Egg Tempera)のアメリカにおけるパイオニアの一人で、義弟のアンドリュー・ワイエスにその技法を紹介したことでも知られる。
A.ワイエスの名作には、Watercolor よりもむしろテンペラ画が多い。
「タイニー近くのドライウオッシュA Dry Wash Near Tinnie 」( watercolor 1969 )乾いた洗濯物とは干上がった川のことか。
「ロケで On Location」(1950" watercolor)
掲げていないが、「The Fence Builders 」(1954)などエッグテンペラも多数描いている。



カロル・ハード(Carol Hurd 1935-)ヘンリエッタの長女。NC・ワイエス第3世代。 夫は画家ピーター・ロジャース 。家族はニューメキシコの牧場に住む。5歳から絵を始めている。
「熱帯Tropical」 (mixed media 2008 ) 馬の絵だが、熱帯と訳して良いのか。彼女の絵の主要なテーマが馬である。

ピーター・ロジャース(Peter W.Rogers 1933-) カロル・ハードの夫。
「道のイメージImages of The Way」(mixed media 2001 )
「潮紅の美人Blushing Beauty」(oil 2008 ) 女の顔をいく枚も描いている。そのうちの一枚。息子のクリスチャン・ロジャースも女の顔シリーズがある。画家の惹かれるモチーフは遺伝するのか、そうではなく、影響し合うのか。

ピーター・デ・ラ・フェンテ Peter de La Fuente (1959-) カロル ハードと最初の夫ラファエル・デ・ラ・フェンテ(Rafael de La Fuente)との長男 。
父ラファエルはスペインで知られた哲学者で作家。
一族では、祖父ピーター・ハードのエッグテンペラを継承している唯一の画家という。NC・ワイエス第4世代。
「赤い門 The Red Gate」( egg tempera 2013 )ごく最近2013年の作品。

クリスチャン・ロジャース(David Christian Rogers 1964-) カロルハ・ードとピーターロジャース(再婚した夫)の末子。NC第4世代。南ニューメキシコの牧場で育ち、6歳から絵を描き始める。ファミリーでは一番若い画家。それでも現在50歳だが。
「疑問 The Question」( アクリル 2012 )疑いの眼で見る女性の顔。ほかにも父と似て女性の顔の絵が多い。

ミカエル・ハード(Michael Hurd 1946-) ヘンリエッタとピーター・ハードの末子。
スタンフォード大卒 。音楽の才能もあったと見え、一時キングストントリオと共演している。 不動産業を経て母ヘンリエッタから絵を学ぶ。
「風景のなかの馬 Horse in Landscape」(制作年不詳 oil)

NCの次女キャロリン・ワイエス(Carolyn Wyeth 1909-1994)は結婚していない。
父NCを師として絵を学び、亡くなるまでペンシルベニア チャドフォードで絵を描いて暮らした。
ファミリーの中で最も優れた画家、今日のアメリカ最強の 女流アーチストと呼ばれた。
甥のA・ワイエスに絵の基礎を教えたことでも知られる。
「樹々から見上げて Up From the Woods」( collotype 1974 )コロタイプはアートタイプartotypeあるいは玻璃(はり)版ともいわれる写真製法の印刷版の一種。



NCの三女アン・ワイエス(Ann Wyeth McCoy 1915-2005) 音楽づけで育ち、ミュージシャン、作曲もした。画家ジョン・マッコイ(John W. McCoy 1910-1989)と結婚する。
三人の子を育てた後絵を始めた。二人の娘アンナとロビンは画家に、一人息子はフィルムメーカーになる。「私は誰からも学ばなかった。私の仕事は全くの個人のもの」という。父NCも夫も絵を教えなかったと見える。絵は環境でなくDNAだという好例か。
「ルイドソ付近、ニューメキシコNear Ruidoso, NM」(制作年不詳watercolor)水彩画らしいドライブラシだ。

ジョン・マッコイ(John W. McCoy 1910-1989) アンの夫。NCワイエスの生徒の1人。彼の内省的なメイン州のブランディーワインの谷や海岸の独特な解釈は、彼をニューイングランドのトップ画家の位置を確立した。1946年から1961年までペンシルバニア美術アカデミーで教鞭をとる
「ハード大農園 Hurd Hacienda」 (watercolor 1960 )

アンナ・ マッコイ(Anna Brelsford McCoy 1940-) アンとジョン・マッコイの長女。NCワイエス3世代。伯母のキャロラインだけでなくNYミルブルックのベネットカレッジで絵を学んだ。
水彩と油彩でユニークなスタイルを発展させ、彼女の風景画と肖像画はもとめる人が多かったという。
「象の歩み Elephant Walk」(制作年不詳 oil )

ロビン ・マッコイ(Robbin McCoy 1944- )NCワイエスの3女アンとマッコイの次女。
NCワイエス3世代。
看護のキャリアを追及しつつ、NCと伯母キャロラインから絵を学ぶ。絵を真剣に始めたのは1988年44歳から。「絵を描いていなかった長い間も私は心の中で絵を描いていた。我が家族は皆可能性を持っている」と彼女は言う。一族はみな絵のDNAを意識しているということか。
「天候の変化 Weather Change」(制作年不詳 watercolor)

ナサニエル ・ワイエスAndrew Nathaniel (A. N.) Wyeth (1948-) NCワイエスの長男(A.ワイエスの兄、Nathaniel Convers Wyeth )とその妻Caroline Pyle の子は5人いるが、そのうち 一人だけが画家となった。つまり、NCワイエス3世代。
母キャロライン・パイルは、NCワイエスの師イラストレーター、ハワード・パイルの姪である。
ナサニエルの絵は歴史的背景に強い関心があることを示すものが多い。
「ホイットフィールドの家 1640 The Whitfield House 1640」(制作年不詳 watercolor)

人間のDNAの99.99%は同じと聞くが、個性をつくる残り0.01%のなんと大きいことかと普段から考えさせられることが多い。
0.01%の中のほんの一部であるpainting のDNAはどう受け継がれ、世代を通じて才能が現出し、伝わっていくのか。はたまた消えるのか。

世襲や2世の話は、政治家や経営者はごめんだが、画家や作家、俳優などは興味深い面もある。

それにしてもこうしてみるとワイエス・ファミリーの場合は、血の流れ・血脈bloodline の壮大なことに圧倒される。森や河の流れに喩えても少しも大げさな感じがしない。
まさに稀有な華麗なる画家一族・一門である。

なお、父祖NCワイエス以外のワイエスファミリーの絵の画像は、

http://www.wyethhurd.com/homepics.html

で見ることが出来る。
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