SSブログ

パステルは鎖をはずし空に舞い上がった [絵]


パステルは、17世紀頃に欧州において発明され、18世紀頃盛んに用いられたもの、という。
が、かたや、ルネサンスのドイツの画家でイングランド王ヘンリー8世の宮廷画家ハンス・ホルバインHans Holbein The Younger (1497-1543)に 1542年制作のパステル自画像があるのをネットの画集で見つけた。さすれば16世紀である。
しかしこの絵は別の画集で見ると、Coloured chalks and pen ,hightened with gold となっていたのでカラーチョーク。これをパステルと称しているようである。どうもこのあたりの歴史は、画材の知識のない素人にはわかりにくい。

いずれにせよ肖像画などに使われ、水彩ほどではなくてもかなり古い歴史を持つようだ。
著名な画家であった父ハンス・ホルバイン・ザ・エルダー(1465年頃 - 1524)にはテンペラ、油彩しか見あたないので、パステルはまだなかったのであろうか。

また、ホルバイン・ザ・ヤンガーは、アナモルフォーシスでも有名だが、これを用いた作例の一つである「大使たち」(1533 油彩)の手前の歪んだ物体と見える頭蓋骨の絵(アナモルフォーズ=歪像画)がよく知られている。
なお、ホルバイン・ヤンガーは、この画集によれば水彩画も描いているのを知った。

ところで、週刊 Do Artという絵の教本を見ていたら、パステルのページでこんな文章にであった。
ー神が天国からほほ笑みかけ、パステルは鎖をはずし空に舞い上がったー
ドガがパステルを使って描いた絵を見た人が、そう言ったという。
エドガー・ドガ(1834〜1917)は、19世紀後半から20世紀初頭の画家であるが、油彩のほか新しい感覚でバレリーナなどの絵にパステルを使ったことで知られる。

パステルが「鎖をはずし空に舞い上がった」というのは、19世紀印象派、新印象派の画家、ドガ等により近代絵画発展の渦中で画材としてあらためて見直されたということであろう。

自分の好きな水彩を描いたドラクロワ、少し暗いけれど渋いミレー、これぞ水彩という水彩を描いたブーダンらもそれぞれパステル画を描いている。

なお、ウィンスロー・ホーマーやジョン・マリンなどアメリカの水彩画家も多いが、彼らのパステル画はまだ見たことが無い。パステルはヨーロッパ、イギリスで盛んに使われたと見える。

わが国でも猪熊弦一郎、梅原龍三郎、山本 鼎、 小磯良平、 田村孝之助、鈴木信太郎らが素描などに使ったというが、「パステル画家」というのは頭に浮かばない。水彩と同じように、専ら素描に使う油彩画家がほとんどということか。

これまで水彩画ばかりに焦点をあてて観てきたが、あらためて巨匠らのパステル画もゆっくりと鑑賞して見たくなった。水彩を描くのにも、あるいは参考になるかも知れないと思うのである。

image-20150212164216.png


掲載した画像は、「自画像」(1542 パステル=カラーチョーク)ハンス・ホルバイン(ヤンガー)と「スター 」(1878 パステル )エドガー・ドガ。
ドガは不透明水彩とパステルのミックスも含め、バレエシーンをたくさん描いた。これはパステルのみの絵の代表作。カサットもドガに影響を受けたか、パステル画が多い。

参考記事 メアリー・カサットとドガの水彩画
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-10-06

以下の画家のパステルは1、2点しか無かったが、それぞれ印象深い絵である。

「Man leaning on a parapet 欄干にもたれている男 」(パステル 1879-1881 )Georges Seurat ジョルジュ・スーラ。
点描画のスーラだけに光と影の表現がどこかそれに似ている。たしか水彩画はさがしたが、無かったように覚えている。
「Portrait of Alma アルマの肖像 」(パステル 1887 )カール・ラーソンCarl Larsson 。
カール・ラーションはスエーデンの線描水彩で有名な画家。パステルは珍しい。
参考記事 カール・ラーションの水彩画
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-08-28

「Outskirts of Paris near Montmartre モンマルトル近くのパリ近郊」( パステル1887 )Vincent Van Gogh ゴッホ。
ゴッホに水彩画があるが、このパステル画はその水彩画に雰囲気が似ている。

「Portrait of the Artist's Son 画家の息子の肖像」 (パステル1890 )ポール・セザンヌPaul Cezanne
セザンヌには、水彩画が沢山あるが、パステルは、少ない。水彩画は、塗り残しの白が絶妙だが、パステル画はそれがない。油彩に似ている。

参考記事 セザンヌとゴッホの水彩画
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-06-23

「Village Church村の教会」(パステル 1898) ピエト・モンドリアンPiet Mondrian
「Going Fishing 漁に出る 」(パステル1900 )モンドリアン
格子、コンポジッションなどの抽象画家モンドリアンは、水彩画も描いた。具象画であるが、良い絵だ。
この2枚のパステルも落ち着いた色調でモンドリアンファッションなどと全く異なっている。

参考記事 ピエト・モンドリアンの水彩画 抽象水彩画2
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-06-07

他にモジリアニにも「Caryatid カリアティッド 」(1913-14 水彩 +パステル )があり、以前このブログでも書いたことがある。カリアティッドは、ギリシア建築の張りを支える女人柱のことで、彫刻家だった彼は水彩でもこれをたくさん描いた。

参考記事 アメディオ・モジリアーニの水彩画
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-10-27


空に舞い上がるほどの絵は望むべくも無いが、暫くパステル画を描いて愉しみたい。そして、いつになるやらわからないけれど、水彩+パステルのミックスが出来れば嬉しい。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。