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シャガールのパステル画(1/2) [絵]

マルク・シャガール(Marc Chagall 1887- 1985、98歳で没)は、20世紀のロシア(現ベラルーシ)出身のフランスの画家。
シャガールは、1881年生まれのパブロ・ピカソより6歳下で、同世代に生きた。思想、画業、私生活とも色んな面で二人は比較されるが、ともに長寿で多作というところは、共通している。

シャガールは、大戦後も40年間にわたり画業を続けた。今年で没後30年だから、ごく最近の巨匠だということにあらためて驚く。

どんな水彩画を描いたか、関心があってかつて当ブログにも書いたが、今回はパステルはどうだったか、ネット画集で探してみた。

シャガールの生涯の作品は油彩、リトグラフ、陶器、ステンドグラスなど2000点と言われる。ピカソは油彩と素描だけでも1万点以上、ほかに版画、挿絵は10万点をゆうに超えるので同じ多作といえ到底及ばない。
そのうち我々が画集で見ることが出来る、シャガールの水彩画は20数点で少ないが、パステルは70点以上ある。ピカソはおなじく水彩4、50点、パステル30点だからシャガールのパステル画は比較的多い方だ。

マルク・シャガールの水彩画
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-08-08

さて、そのシャガールのパステルである。
シャガールは20世紀の画家のなかでも、すぐれて色彩豊かな画家の一人だと誰でも認める。
彼の絵は、愛や聖書をテーマにしたものが多いが、いずれも色彩が溢れている。それは暗い背景の絵でも、全体が明るい基調の絵、どちらでも鮮やかに見るものの眼に飛び込んで来る。

シャガールのこの明るい色彩を作り出す原点のひとつに、パステルによる素描や下絵ががあるのではないかというのが、素人探偵の推理である。シャガールの独自の鳥やロバ、牛の眼、浮遊する恋人たちなどの原点は何か、リトグラフでは?などと考えるだけでもアマチュアは愉しい。

周知のように、絵具は、色のもととなる粉状の「顔料」と、それをつなぐ「媒材」からできているが、 パステルはわずかな量の媒材で固めるため、顔料の色あいをそのままに描くことができる画材といわれている。
また、筆を使わずに、直接手に持って自由な太さや濃さで輪郭線を描くことが出来るので、水彩などより本制作のイメージを作るのに適しているように思う。

シャガールのパステルは、ドガやマネのパステルと違ってタブローは少なく、デッサン、スケッチスタディ、下絵が多い。油彩画のイメージを作るのに色彩感覚にあった画材として、パステルを多用したのであろう。

シャガールのパステルは1963年(76歳)前後の作品が多い。それ以前にパステルは描かなかったというより、残っていないのではないかと思う。大戦を経て画家は自作を失ったものも多いという。
パステルは1973年(86歳)頃まで描いているがその後のパステルは見当たらない。油彩やリトグラフは最晩年まで制作しているが。

パステルと油彩をいくつか並べてみた。シャガールのパステルは、グワッシュや水彩をミックスしたものが多い。また同じ題材の絵を何枚も描いているのが目立つ。


絵は「Song of Songs Ⅳソロモンの雅歌Ⅳ」(1958パステル 水彩)の模写。(F4ウオーターフォード細目) バックに水彩の赤系を塗ったが、薄かったので白が生きない。さらにパステルを上に塗り重ねた。まだシャガールの模写はムリか。

image.jpg



「Song of Songs Ⅳソロモンの雅歌Ⅳ」(1958パステル 水彩) 「ソロモンの雅歌」は、ⅠからⅤまでローマ数字がついていてスタディ、下絵を含めると枚数が多い。Ⅳはペガサスに乗っているのが古代イスラエル王国のダヴィデ王と愛人のバテシバ。二人の間に生まれたのがソロモン王。28×43cm。
「Song of Songs Ⅳ 」(1958 油彩)61×50cm。
「The Creation of Man 人類の創造」(1958 パステル 水彩)
「The Creation of Man 」(1958 油彩)
「Jacob Wrestling with the Angelヤコブと天使の闘い 」(1963 パステル 鉛筆 水彩)48×40cm。
「Jacob Wrestling with the Angel」( 1963 油彩)38.2×46.2cm。ほかに18×25cmのものがあるが、パステルの方が油彩より大きいのは珍しい。






「Noah and the Rainbow ノアと虹」(1963 鉛筆 グワッシュ )
「Noah and the Rainbow」( 1963 油彩)
「Paradise 楽園」(1961 インディアンインキ パステル)
「Paradise 」(油彩 1961 )
「Adam and Eve expelled from Paradise 楽園から追放されたアダムとイヴ」(1961 ) パステルと明記されていないがパステルであろう。
「Adam and Eve expelled from Paradise 」(1961 油彩)







「The Sacrifice of Isaacイサクの生贄」( 1966 パステル)息子イサクを刺そうとナイフを持つアブラハム。34×29cm。
「The Sacrifice of Isaac 」(1966 油彩)235×230cm。
「Study to "The Jacob's Dreamヤコブの夢のための習作 」(1963 パステル)
「Jacob's Ladder」( 1973 油彩)73×92cm。題名も制作年も違うので、パステルは下絵ではない。似ているので並べた。
「 Miriam dances 」(1931 パステル)ミリアムはモーゼの妹。
「The dance of Myriam 」1966 グワッシュ 鉛筆 パステル 水彩 )こちらも2枚とも同じテーマのパステルだが、制作年、マテリアルが異なる。
「Untitled」( 1973パステル)最後の頃のパステル。聖書が題材のものとは全く異なる絵だ。

ながめていて気付くのはシャガールのパステルは、一時期に描かれたもので、題材を聖書の物語から取ったものが大部分だということである。たまたま残されて我々が観ることが出来るものがそうなのか、ほかの時期に、ほかの題材でもパステルを使っているのかどうかわからないが。このあたりになると、素人探偵の手に負えなくなってくる。

次回は、シャガールの聖書シリーズのうち「Song of Songs」について。

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