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シャガールのパステル画(2/2終)−Song of Songsソロモンの雅歌 [絵]

1966年、シャガールは17点の連作「旧聖書のメッセージ」をフランス国家に寄贈。詩人マルローはこの連作を含むシャガールの作品を展示するための国立美術館の建設を推進する。1973年画家の86歳の誕生日に、ニース市に「マルク・シャガール聖書のメッセージ国立美術館」(現国立マルク・シャガール美術館)が開館した。

残念ながら、この美術館に行ったことはないが、シャガールの好きな日本人は創世記をテーマにした絵画シリーズの展示を観に多く訪ねているという。ここには「Song of Songsソロモンの雅歌」もメインヴィジアルのひとつとして展示されているようだ。
ウィキペディアによれば、「雅歌はヘブライ聖書の中の一編。 男女の恋の歌であり、ユダヤ教では「諸書」のうちに入る。キリスト教では伝統的に預言書の前に置かれる。恋愛と男女の賛美を歌い上げる詩であるため、扱いをめぐって古来から議論が絶えなかったが、さまざまな経緯を経て正典におさめられた。」 とある。
「The song of songs、は3000の箴言と1005首の歌を作ったソロモン王によるものとされる。
ソロモン王はイスラエル王国の三代王であり、ダヴィデ王とバテシバとの子である。雅歌は、愛の歌、すなわち、男性と女性、花婿と花嫁、夫と妻の愛がどんなに豊かで素晴らしいものであるかを教えるもので、そのために聖書、神の言葉に入っているとされる。この雅歌の成立は紀元前5世紀中頃だという。

シャガールがソロモンの雅歌をなぜ題材に選んだかは、信仰と深く関わっているのだろうが、愛の画家として愛の讃歌を描いたことはごく自然な感じもある。
画家は、1944年亡命地アメリカでベラと死別、1952年60歳のときユダヤ女性ヴァランティーヌ・ブロッキーと再婚する。
生涯に何人もの愛人をつくり、80歳で結婚したピカソとは対照的に、純愛を貫いたシャガールにとっては、死別したベラと再婚したヴァランティーヌへの愛は、ある意味で連続して繋がっており、自らの二人への愛と「The song of songs」のテーマも重なったであろう事は容易に想像し得る。誰が見ても「song of songs」に登場する男女は、シャガールとベラ、ヴァランティーヌその人である。

パステルなどの習作、下絵と油彩を並べてみた。ⅠからⅤまでスケッチを含めて枚数は夥しい。もっとも前回掲げたほかの聖書テーマの絵も同じではあるが。




「Song of Songs Ⅰ 」(1960 パステル)
「Song of Songs Ⅰ 」(1960 油彩)
「Song of Songs Ⅰ 」(1960 パステル)29.9×24cm。

「Song of Songs Ⅱ 」1957インディアンインキ パステル 鉛筆30×24.4cm。
「Song of Songs Ⅱ 」(1957 グワッシュ 油彩)58.5×46cm。
「Song of Songs Ⅱ 」1957 パステル鉛筆)

「Song of Songs Ⅲ 」(1960 パステル )38.×28.5cm。
「Song of Songs Ⅲ 」(1960 グワッシュ 油彩) 42.5×32cm。
「Song of Songs Ⅲ 」(1960インク 鉛筆 )33.5×28.5cm。

「Song of Songs Ⅳ」(1958インディアンインキ 水彩) 58.8×47.5cm。
「Song of Songs Ⅳ」(1958グワッシュ 油彩) 50.5×36.5cm。
「Song of Songs Ⅳ」(1958 インキ 油彩 パステル )55.6×47.4cm。自画像風。

「Song of Songs Ⅴ」(1965 パステル)
「Song of Songs Ⅴ 」(グワッシュ 油彩)55×45 cm。
「Song of Songs Ⅴ 」(1965 油彩 )赤 、ピンクが基調。白い葉 と男の青い顔 が強烈。青い顔は男が感動しているさまという。226×150 cm。この絵は、「Song of Songs」の中では構図が特異。

「Song of Songs」(1974 油彩)45.5×46 cm 。87歳のときの作品。おそらく最後のもので集大成か。Ⅰ〜Ⅳのどれとも似ていない。ナンバーがついていない。

「Song of Songs」は、1957年から17年にわたって描かれ、1番新しいのは1974年(油彩)。
Ⅱ(1957)が最も早く描かれ、Ⅳ(1958)、ⅠとⅢ(1960)、Ⅴ(1965)の順。なぜⅠからⅤまであるのかは知らない。詩篇の章か何かだろうか。男女、天使、動物、遠景が画面いっぱいにちりばまれて描かれ、それぞれに魅力的な絵である。
本制作の油彩は、全体に赤が基調と言えよう。そして描かれた女性は、皆官能的だ。スタディを含めて下絵は、グワッシュもあるがインディアンインクとパステルが多い。


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