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二人のガブリエル・マリ [絵]


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結婚五十一年目に入ってから、「金婚式」という曲があることを知った。音楽はとくにオクテである。たぶん老人のための歌なのに、祝婚歌のように明るく美しい曲なのでiPodにダウンロードして時々聴く。
「金婚式 La cinquantaine(サンカンテーヌ)」は、フランスの作曲家ガブリエル・マリーによるガヴォット風のピアノ独奏曲。
フランス語のタイトル「cinquantaine(サンカンテーヌ)」は「50」のこと、50回目の結婚記念日を金製品の贈り物で祝う、「金婚式」そのものである。
今日では、ヴァイオリンとピアノの室内楽やヴァイオリン独奏、フルート独奏曲、管弦楽曲などに編曲されて演奏される機会が多く、演奏家にとっては練習曲のひとつのよう。

ガブリエル=マリ(Gabriel-Marie)ことジャン・ガブリエル・プロスペル・マリ(Jean Gabriel Prosper Marie, 1852 - 1928 76歳で没)は、フランスの指揮者、作曲家。

ガブリエル・マリーは指揮者としても活躍しており、サン=サーンスらの主導で設立された国民音楽協会(Société nationale de musique)の演奏会で7年間指揮を務めた。
なお、ガブリエル・マリーが作曲した作品はいくつか確認されているが、この『金婚式 La cinquantaine』以外の曲は現代ではほとんど知られていないという。

ネットでこのことを調べていたら、曖昧回避か、もう一人のガブリエルマリーがいた。こちらは画家、しかも女性。知らない画家である。オクテは音楽だけではなかった。

女流画家はこれまで、三人をこのブログで取り上げている。ほかには葛飾応為、三岸節子もいる。
画家を男だから女だからとして見ることはないが、なぜ閨秀画家というのか。閨秀作家もいるが閨秀音楽家とはあまり言わないのはなぜか、などと埒もないことを考える。キュリー夫人が閨秀学者とも言わない。閨秀とは、「学問・芸術に優れた女性」と辞書にあるのだが。

話が飛ぶけれど、私見、偏見、独断ながら我が国では現代の水彩画家は、どうも女性の方が良い絵を描くような気がする。実際、一緒にカルチャーでお稽古をした仲間でも、女性の方が男性よりセンスも良いように思った。

これまで取り上げた女流画家。
①ベルト・モリゾ(Berthe Morisot、1841年- 1895年)は、19世紀印象派の女性画家。男性中心の19世紀における初期の女性画家ということもあって、フェミニズム研究でのアプローチが多いというが、マネの影響を受けて素晴らしい絵を描いている。

ベルト・モリゾの水彩画
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-09-12

②メアリー・スティーヴンソン・カサット(Mary Stevenson Cassatt, 1844年- 1926年)は、アメリカの画家・版画家。ベルト・モリゾより3歳下の生まれ。モリゾは51歳で亡くなったが、カサットは82歳の長寿を全うした。ドガのパステルに触発されてパステルが多いが水彩もある。

メアリー・カサットとドガの水彩画
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2013-10-06

③シュザンヌ・ヴァラドン(Suzanne Valadon, 1865- 1938 72歳で没)はフランス、モンマルトルの画家。画家になる前は、ルノアールら著名な画家のモデルでもあった。画家モーリス・ユトリロ(Maurice Utrillo, 1883 - 1955 71歳で没)の母である。

「ユトリロとヴァラドン展」へ行く
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2015-06-05


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さて、マリー=ガブリエル・カペ(Marie-Gabrielle Capet, 1761 - 1818)は、18世紀後半に活動した新古典主義のフランスの画家である。
代表作が「自画像」(1783年頃 油彩) 国立西洋美術館蔵、であるというのも珍しい。


美術アカデミーの最初の閨秀画家のひとりとして名をはせていた肖像画家アデライード・ラビーユ=ギアール(Adélaïde Labille-Guiard, 1749 - 1803)のもとに弟子入りし、このときに描いた絵が、カペの「自画像」といわれている。このとき、カペは芳紀22歳だった。まさに発しとしている。
カペはパステルで肖像画も描いたというが、残念ながら画像を見つけられなかった。

師のギアールの代表作は「弟子二人と一緒の自画像」(1785 油彩) NY、メトロポリタン美術館蔵で二人の弟子とはマリー・カペとキャロー・デュ・ローズモンド。どちらがかぺなのか、自分には分からない。

ところで、18世紀で最も有名なフランスの閨秀画家は、エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(Marie Élisabeth-Louise Vigée Le Brun, 1755 - 1842)とされる。
代表作は「麦藁帽子をかぶった自画像」(1782 油彩)。真正面を向いた画家の唇にちいさな歯が見えるのが話題になったというのは、小事ながら時代を反映しているのか。この時世女流画家には、生きにくかったであろうことは想像に難くない。

ルブランはマリー・アントワネット王妃の御用画家であり、多くの王妃の肖像画を描いている。王妃の「顔つきは整っていなかったが、肌は輝かんばかりで、すきとおって一点の曇りもなかった。思い通りの効果を出す絵の具が私にはなかった」と述べている。王妃の悲劇と重なり痛々しい。ふと、昔行ったトリアノン村を想い出した。
掲げたのは、代表作となっている「マリー・アントワネット」(1783 油彩)。

18世紀後半といえば、フランス革命が1787年の貴族の反抗から1799年のナポレオンによるクーデターまでをいうのだから、まさに彼女たちは革命前、ルイ王朝の宮廷画家として活躍したのだ。19世紀初期に男性画家と肩をならべ先駆的に活動したモリゾやカサットらの1世代前になる。
ガブリエル・マリー・カペらを新古典主義というからには、美術史の専門家なら、彼女たちの中に単なる肖像画家だけでなく、次代に伝えられていく新しい芽も見出すに違いない。

今のところ自分には、美人画としか見えないのは残念である。

それにしても、名前が同じというだけで無関係の人物を並べて話題にするとは、われながらとりとめのない、方向感のないブログであると思う。このブログらしいといえばそのとおりではあるが。
ラ・トォールもそうだが、なぜかあまり意味のない同じ名前とかに惹かれるたちであることは間違いない。

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