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病院に「ジャズ」が… [随想]


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リタイア以前を含めて20年以上、世話になっている病院の待合室にアンリ・マティスの「ジャズ」20点すべてが展示されているのに気づいた。
今もほぼ毎月一回程度は行くのに、気がつかなかったのはどうしてだろう。
人は知らないものは見えない、関心が無いものは眼に入らないというが、それにしてもわれながらひどい。年はとりたくないものである。
病院は最近リフォームしているので、そのときから「ジャズ」を飾ったのだろう。目に入らないはずはないと思うのだが、わが眼を疑うとはこのこと。

版画集「ジャズ」については、このブログにマティスの切り紙絵のことを書き、そのなかでとりあげたばかりである。

アンリ・マティスのグワッシュ切り紙絵2ー 挿し絵本 「ジャズ」
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2016-04-11

病院には原画すべてが1,2階の壁に掛けてあり、一番手前には「ジャズ」について過不足ない説明文まで掲示されていた。
マティスが1941年、第二次世界大戦が始まろうとしている時、生死にかかるほどの腸の手術を受け、回復に時間がかかり車椅子の生活を余儀なくされた時期(1947年)に編纂された、と紹介したうえで、
「どのように苦しい時でも希望を失わない心の強靭さが、見る者を元気づける作品となっています」ーとある。
まさにそのとおりで、医者に診て貰おうと、病院にきて順番を待つ不安いっぱいの人々を励ますにはもっとも適した絵に違いない。
マティスの切り絵だと知って観るか、知らずに観るかは全く関係無い。絵から何を感じるかということが一番大事なことと思いつつも、あらためてまじまじと絵を見つめた。我が絵画鑑賞眼のレベルの低さを思い知らされるだけである。
これがマティスの「室内」や「婦人像」だったら、あ、マティスだと気付いたであろうから、デザイン性の高い「切り紙絵」だからきづかなかったのか、と繰り返しうだうだ考えている。

さて、展示されている絵は、フランスの出版社が2005年リトグラフ(石版画)によって複製したものという。大きさはF 20くらいか、「ラグーン」や「トボガン」などいずれも見ごたえがある。

例えば「白と青のトルソ(1944)」は、題名が「フォルム」となっていたが、鋏のあとらしきものまで残っている感じで、当然ながらデジタル画像よりも迫力がある。

病院の壁に「ジャズ」を選んだのは、存じ上げている院長先生、世話になっている先生らお医者さんでなく、担当の方であろうが、決定された方々を含めて良い選択だと感心する。
今まで気づかなかったのは恥ずかしいが、これからは待ち時間も退屈しないと思うと嬉しい。この病院はやたらと待たせる病院なのである。

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