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爛 瀬戸内寂聴 新潮社 2013 [本]

 

コロナ禍で変わったことは、幾つもあるが読書が大幅に減少したのもその一つ。状況からすれば、むしろ読書量は増えて当たり前のようなものだし、たぶん他の人はそういう人も多いと思うが、自分の場合は図書館に行かなくなったのが最大要因らしい。

 先日久しぶりに区立図書館に行くと図書滅菌器なるものが導入されていた。図書館も今は民間業者に委託されているのだろうが、コロナ禍の利用者減で何かと大変なのだろうと推察する。

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 本棚を探しても久しぶりのせいか読みたい本もあまりない。ふと「爛」(瀬戸内寂聴 新潮社 2013)が目に入って来た。

 え?爛、らん? 

 「爛」は辞書を引けば解ることだが、「ただれる」と「鮮やか」と二つの意味がある。しかしどちらかと言えば、火篇のせいか前者の意味の方を自分は強く意識する。

 「爛」1 ただれる。くさる。やわらかくなってくずれる。「爛熟/糜爛 (びらん) ・腐爛」2 あふれんばかりに光り輝く。あざやか。「爛然・爛漫・爛爛/絢爛 (けんらん) ・燦爛 (さんらん) 」

 本(小説)の表題としてはあまり関心しないなと思ったのが借りた動機だ。え?と思ったのである。

作家はもちろん後者の意味で題名にしたのだろうが。

 「爛」の主題は高齢女性の性愛である。若かろうが高齢だろうが女性のこと、中でも性愛は基本的に理解は不可能だと思っているので、この本も流し読みでもあって本当のところは解らないと思う。

 80歳くらいの女性の性愛の話だから、大岡越前の母堂の火鉢の灰、花咲婆さんや高力士などという言葉が小説にも出てくると言えば中身はおおよそ推察出来るだろう。

 瀬戸内寂聴は1922年生まれ。2021年惜しまれつつ99歳で亡くなった。「爛」を書いた2013年は、自分と同じ82歳。我が老化ぶりと比べるのも気が引けるが、そのエネルギーには感心するのみ。

 読み終わって何か最近これに似たようなものを読んだなと思い出した。「上海甘苦」(高樹のぶ子 日本経済新聞社Ⅰ〜Ⅳ 2009)である。 これも表題の「甘苦」に惹かれて借りた。主人公は上海でエステサロンを経営する51歳の女性と39歳の男と言えば解るように「爛」と似たテーマである。高樹のぶ子は1946年生まれだから63歳の時の作品である。

 表題の甘苦(かんく)も辞書には二つの意味がある。 あまいことと、にがいこと。 楽しいことと、苦しいこと。苦楽。「―を共にする」

 作家の意図は強いて言えば後者であろうが、前者の「甘い、にがい」ももちろん含まれていよう。上海は二度ほど現役の頃、行ったことがあって小説の中の街の描写と挿入画(写真)が懐かしかった。

 二つの小説の主題は高齢者の性愛であって、男にとっても老人文学のテーマの一つであるそれと何ら変わりはない。

 

 1932年生まれの岸恵子81歳の著書「わりなき恋」(幻冬社2013)などと同類だがたまたまとはいえ、似たものを良く読むなと我ながら感心する。

 「わりなき恋」は女性の国際的ドキュメンタリー作家69歳と大企業のトップ58歳(男)の恋の話だったが、だいぶ前、たしか老いらくの恋をさかんにこのブログで書いていた頃に読んだ。

 

 意図的に選んで読んでいるわけでは無いが、老人文学を良く手にするのはやはり老人にとって自然のことなのだろう。そして老人文学には男もの、女ものがあるのもごく自然なことである。


 

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