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有明海のいきものたち [自然]

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有明海干拓事業に関して排水門の開門を命じる福岡高裁の判決があった。この問題のそもそもと帰趨については、大いに関心がある。

かつて福岡に転勤し、一年と一カ月勤めた。福岡県のほか佐賀県が担当だったので、せっせと佐賀に通うことになる。そのとき佐賀の有明海にはここ独特の生き物が棲んでいると教えて貰った。太古九州は大陸と陸続きであったことから中国沿岸、朝鮮半島に生きる生物と同じ先祖の魚介類が、独特の進化あるいは全く進化せずに生き伸びて来たため、他県では見られないものが沢山いるという。
誰もが知っているむつごろう。目玉の大きいハゼ科の魚。干潟で飛び跳ねる姿は愛嬌がある。良く見れば美しい魚体である。かば焼きが絶品という。
ほかにわらすぼ。むつごろうと並ぶ珍魚。これもハゼ科だのこと。うなぎの様な体形で紫色のぬるぬるした気味悪い体と、歯がむき出しでエイリアンを思わせる面構えを持つ。
有明海の干潟の泥の中に生息する。内臓を取り丸ごと干し物にしたものをあぶったり、揚げたりしてたべる。姿に似合わず煮付けにしても美味しいそうだ。干したものは、棒だらの如く、杖のごとく店の前の壺に立てて入れられ売られていた。これを粉にしてふりかけで食べることもあるという。
くっぞこ(舌平目)は、靴の底という意味。ドーバーソールに劣らず美味。
次は、エツ(斉魚)。日本では有明海にしか生息しない魚、にしん目カタクチイワシ科。銀白色。扁平で、ペーパーナイフの様な形をしている。韓国では、葦魚、中国では刀魚。5月~8月の産卵の為に川をさかのぼる。漁は流し刺し網で漁獲する。エツは小骨が多いので「はも」のように料理の際、狭い間隔で包丁を入れ骨きりをする。 刺身、から揚げ、煮付けなどで食べる。川のほとりの料理屋でこれを御馳走になったことがある。どんな味だったかは残念ながら覚えていない。
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 ほかにしゃっぱ(しゃこ)。見たことは無いが、これもはぜの仲間で体長50センチにもなるというはぜくち、などもいるという。
 貝類ではなんといってもメカジャ(女冠者と書くのが有力説)ミドリシャミセンガイのこと。いかにも何万年もとろりとした泥の中で生きていたという風情の貝。まて貝も沢山獲れる。
 有明海のイソギンチャクのつくだにというものをこのときはじめて食べた。
食べる話ばかりで恐縮であるが、有名な有明海海苔ワタリガニなど美味しいものばかりだ。

 さて、有明湾の干潟はこれら珍しい生き物がくらしている場所である。1997年これを埋め立てて長崎県側に農地をつくることとなる。そのため潮を堰き止める水門が(まるでギロチンが落ちるように)海に落とされる衝撃的な映像がテレビニュースで流れた。  沿岸4県、熊本、佐賀、福岡、長崎の漁業者が漁業被害を理由に裁判を起こす。むつごろうも原告に加わったと聞いたことがある。
 2010年12月、福岡高裁は、影響調査等のための開門命令判決を下す。政府はその上告を断念。
 今後のこの問題の行方は予断を許さない。しかし、少なくともここに生きる多様な生物、干潟に羽を休める渡り鳥たちにとっては朗報には違いない。

 長期にわたって我が国は、山を削り、海を埋め立て、無数の生き物を殺戮してきた。どんな理由があろうと、むつごろうなど多くの生き物のホロコーストは、もうやめて良いのではないかと思うのは私だけではないだろう。

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