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個体発生は系統発生を繰り返すか [自然]


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かつて学んだわが高校はのんびりした田舎の学校であった。部活は中学までやっていた野球をやめて空手部にした。神道自然流といった。何を考えていたやら。高校三年になり、受験を控え二年間でやめてしまい生兵法になってしまったが、とにかくのんびりしていた。

55年も前のことなのに、思い出す先生は何人かいられる。その一人が生物のT先生である。数少ない母校の卒業生だったように覚えている。授業のことはほとんど忘れているが、話されたことの二つが印象に残っている。
ひとつは「女?あれは人類ではない。」、もうひとつは「自然発生は系統発生を繰り返す。」というものである。
前者は生物学と関連してのことだったのでは無いだろう。奥さんとその日喧嘩でもされたのかもしれないと今になると微笑ましい気もする。

後者は、細胞分裂などの時間だったようにも思うが定かでは無い。
爾来、ながいことずっと気になっていた。もう7,8年ほど前になろうが、「免疫の意味論」などを書いた多田富雄の本や養老孟司氏の「都市主義の限界」など文章を読んでいて、この二つを同時期に思い出した。
もともと人類は女だけであったが、種の保存のために男が女から作られたという。無理やり作られたので完璧でない、男に色盲が多いのもそのせいだと。だから男は弱く、女は強いのだという。女は存在で男は現象(多田)であるとまで言われる。女は基本的に消耗品である男より強く優秀である、という我が持論にぴったり合っていた。
男は女より数段優れているのだというT先生のお考えは基本的に誤りである。それは、長い人類の歴史からみれば、ごく最近に社会的動物となった人間の浅知恵が作り出した幻想以外の何物でもないのだ。われわれは、女は手弱女、足弱などと大きな誤解をさせられ、男女平等、機会均等などたわけたことを言ってきた。あさはかである。

二つ目の「個体発生では、進化の変化過程を経る」という方は、1824年「セールの法則」、1866年「ヘッケルの反復説」が出ているそうで、T先生に教えて貰ったのが我が高校時代の1957,8年頃だからかなり、その時点でもすでに長いこと議論されていたことになる。ダーウィンの進化論とともに、この説は有名なので知っている人は多い。三省堂 大辞林にはこうある。

「人間の胎児は、魚類、両生類、爬虫類、原始哺乳類という進化の諸段階を繰り返すような発生プロセスをたどって成長している。」
科学者である多田富雄や養老孟司が「個体発生は系統発生を繰り返す」説を肯定しているのかその説をどう思っているのかは知らない。随筆のなかだったか、誰か(玄侑宗久?)との対談だったかで、三木成夫著「胎児の世界」(中公新書)を紹介し、著者三木成夫は「確信犯的だ」と言う言い方をしている。早速これを読んで見た。還暦をかなり過ぎた愚昧な老人を仰天させた。もちろん全てを理解出来たわけではないが、自分には少なからずショッキングな本であった。

 素人には難しいことはよくわからないが、この説「自然発生は系統発生を繰り返す。」が出てから2世紀以上もたっているのに、今なお、定説となっていないようだが、もし、繰り返すのならその理由が何かなど、なにやら人間の根源にかかわる神秘的なというか謎めいた議論のような気がする。
 
 のんびりしたわが高校のT先生のふたつのことばは、その後もいろいろなことを考えさせてくれた。温和な先生の顔を想い出して、田舎の町の郊外にあった校舎とわが若かりし時もともに懐かしく、何やらしみじみとほんわかする。


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