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四股名 [随想]

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明日から大相撲大阪場所が始まる。東日本大震災から丁度一年が経った日となるが、被災地のファンが少しでも楽しめたら嬉しい。

中学生の頃、身体はひよわで小さかったが人とすもうをとるのは嫌いではなかった。こちらが小兵でも、大きい相手は結構腰が高いので勝機がない訳でもない。
そのせいか今でも相撲を見るのは、サッカーなどを見るよりもより好きだ。昔、仕事の接待で九州(福岡)場所を見たことがあるが、ほとんどテレビである。相撲を見るようになってからずいぶん長い年月がたっている。
舞の海など小さい力士も魅力的であるが、ファンまでにはならなかった。相撲力士は、やはり強くて大きい方が良い。舞の海は引退後の解説者としては横綱級と認めるのだが。

特に贔屓の力士がいるわけではない。取手市に住む友人が牛久出身である稀勢の里の後援会に入り、時折バスで国技館に応援に行く。そういう話を聞くとやはり稀勢の里の活躍が気になるものである。
転勤で 大分や福岡に住んでいたことがあるので、そういったなにがしかの縁ある地の出身力士もやはり気になる。呼出しは必ず臼杵市など市、町レベルなので懐かしくなって無意識に応援していたりする。相撲とはそういうものなのだろう。
立ち会いの間や、勝負の力士の動き、表情などを楽しんでいる。贔屓の力士がいればきっともっと楽しめるのだろうと思う。

最近の相撲界もいろいろ苦労が多いようだが、なんとか健全でいて永らく愉しみを提供し続けて欲しいと念じているのは自分だけではないだろう。
人は誤解しているが、相撲はスポーツではない。言い過ぎであればスポーツだけではないと言い換えても良い。スポーツは稽古場までだ。本場所は神事とまでは言わないけれども芸事に近い。だから芸名、四股名があるのだ。

四股名(しこな)とは、国技である相撲における力士の呼び名でかつ芸名であると思う。辞書には、四股名はもともとは醜名と書いたとある。この場合の「醜」とは「みにくい」という意味ではなく、「逞しい」という意味だそうである。ならば「醜女」が逞しい女か否かは知らぬ。いつからか四股と相まって「四股名」と書かれるようになった。しこ名と書かれることも多いという。
四股名は舞の海のように雅なのもの、あるいは最近でいえば臥牙丸のような珍妙なものを含めて雑多である。芸名だから過去も現在も将来もきっとそうだろうと容易に想像できる。
外国人力士が増えていることもあり、近年首をかしげたくなるものも無いではない。
 星安出寿 保世  ほしあんです ほせ 、 星誕期 偉真智  ほしたんご いまち 。二人とも平成の力士だ。
かつてジェシー とカタカナの四股名の力士が実際にいたように思う。後に高見山関と改名した。今さすがにカタカナや英数字は無い。協会で使える文字を制限しているのだろうか。
大露羅 満 おうろらみつる 、阿夢露 光大 あむうるみつひろ 。後者の出身はアムール川流域か。イタリア人なら 阿漏れ澪もありかと嫌味のひとつも言いたくなる。
トンガ 出身だから 南ノ島 とか、黒海 、把瑠都なども安直過ぎるのではないか。

力士は場所数が増え、稽古と巡業に明け暮れるので体力的にも精神的にも過酷なせいか選手生命は短い。それだけ力士の数が多くなる。人に知られるほどのいわゆる関取になれるのはほんの一部であろう。
数が多いから四股名も多い道理である。過去を含め良い、四股名もあるが変なのもたくさんある。
さすがにテレビ放送実況中継をするようになってからは、おかしな発音の四股名は消えた。
珍名四股名は取り上げたらキリがないけれど、毎日猫に遊んでもらっている猫好きとしては猫のついた昔の四股名が面白い。
動物を冠した四股名には、おっとせい まであり、蛸 、蟻 、象 、馬 などがあるとか。なぜか牛はないようだ。牛相撲と関係があるのか。
猫で有名なのは、江戸時代の猫又 虎右衛門(ねこまた とらえもん、伊勢ノ海部屋) 。部屋伝統の出世名だそうな。ほかに
 黒猫 白吉  くろねこ しろきち 明治 三段目
 三毛猫 泣太郎  みけねこ なきたろう  明治 序ノ口
 玉猫 三毛蔵  たまねこ みけぞう     大正 序二段
 山猫 三毛蔵  やまねこ みけぞう   明治 幕下
 三毛猫 三吉  みけねこ さんきち     明治 序二段
 小猫 三毛蔵  こねこ みけぞう     大正 序二段
 招猫 米吉  まねきねこ よねきち 明治 序二段
そういえば四股名とは別だが、決まり手に 猫騙しというのがあって、舞の海が使ったことがあったような気がする。あれは四十八手に入っているのだろうか。立会いでふわりと飛び上がり相手力士の目から消えるという高度な芸だ。

ついでながら 珍名四股名はいくらでもあるが、次のようなものは、強くないからあえて強がってつけるような気がする。
 突撃 進  とつげき すすむ 大正 幕下
 貫  透  つらぬき とおる 大正 十両
  
次のは文字どうり言葉遊びだ。余裕たっぷりだが、これもあまり強くないように思う。
 九 九之助  いちじく きゅうのすけ 明治 小結
 い 助次郎  かながしら すけじろう 明治か
 京   昇         かなどめ のぼる 大正 序二段
 子 音二郎  えとがしら おとじろう 明治 三段目

四股名をつけるときの親方や本人の気持は、普通の人が産まれた子供に命名する時の親たちの気持ちととあまり差がないのではないか。健康で強くなって欲しい、出世して欲しいという夢と希望を託し、文字は優雅で音は綺麗で呼びやすく出身地も分かればなお良い。静岡で生まれた静子さんなどのように。
普通の人は改名しないかぎり一生命名された名前と付き合うが、力士は引退すると新しい親方名を襲名したり、四股名をそのまま使う人もいる。もと魁皇など元がついて呼ばれる。もちろん本名に戻る人も多いだろう。

人の本名は自ら選ぶことができない。しかし力士でなくとも人は名前を変えることはできる。ペンネーム、WEB名、歌手、俳号、俳優名など理由や動機はまちまちだが、その命名もまたそれぞれ興味深い。

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