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妙正寺川の立葵(タチアオイ)(1) [自然]

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家の近くを流れている妙正寺川は、かつて小さいながら暴れん坊川だったとかで、いまやコンクリートで固められてしまった川である。
妙正寺公園にある池を源として、下流は高田馬場で神田川に合流する。延長9.7kmを有する。
 近くには似たような規模の善福寺川がある。この川は杉並区の善福寺池に源を持ち、同じく神田川に注ぐ、延長約10.5kmを有する。
この二つの川は一級河川ながら、今でも溢れ出ることがあり、最近では平成17年9月大雨で増水、中野、杉並区中心に3000戸が浸水した。

その神田川は隅田川に合流し、東京湾に流れ込む。神田川としての水源地は、吉祥寺の井の頭池になる。かぐや姫のヒット曲でも有名な神田川は、全長24.5km、都心を流れる川はたいてい一部分暗渠になるものだが、珍しく全区間開渠。
昔は神田上水から取水、江戸の水道として利用された。都内を流れる河川としては最も大きい。近年水質浄化も著しく1993年ごろから鮎の遡上も確認されている。
都建設局河川部のHPによると、「一時は水質が悪化していましたが、今では水もきれいになりアユの遡上が見られるようになりました。そこで「アユが喜ぶ神田川」をめざし、いきものにやさしい川づくりを進めています。」とあるが、むろん妙正寺川のこの辺りでは魚の影さえ見たことがない。

さて妙正寺川は、杉並、中野、新宿、豊島区を流れ、我が家の近く辺りは両岸の道路が散歩道になっている。
誰かが植えたのか 、種が飛んで来たのか、道路脇の殆ど土がないところに立葵(タチアオイ)が毎年赤い花を咲かせる。生命力の強い花である。

タチアオイ(立葵、学名Althaea rosea)は、アオイ科の宿根性の多年草である。
従来は、中国原産と考えられていたが、今はビロードアオイ属のトルコ原産種と東ヨーロッパ原産種との雑種とする説が有力という。
日本には、古くから薬用として渡来したといわれている。
花が美しいので、園芸用に様々な品種改良がなされた。草丈は1~3mで茎は直立する。 花期は、6~8月。花は一重や八重のもあり、色は赤、ピンク、白、紫、黄色など多彩である。花の直径は10cmほど。

歳時記では、葵、花葵、銭葵などと夏の季語。

立葵いま少年の姿して 岩田由美

このうち銭葵(ぜにあおい)は、アオイ科の越年草。ヨーロッパ原産。古くから観賞用に栽培され、よく見かける。高さ約70センチメートル。葉は円形。初夏、葉腋に五弁花を数個ずつつける。花弁は淡紫色で紫色の脈がある。小葵(こあおい)、錦葵(きんき)とも。


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アオイ(葵)という名は、もともとはフユアオイなどを指し、「仰(あおぐ)日(ひ)」の意味で、葉に向日性があるためという。アカイ花が咲くのにアオイとは、これいかにと誰も思うが、その理由はこれによるらしい。どんな植物でも花でなく葉はすべて向日性があると思うのだが。

辞書では、葵、あふひ。アオイ科のアオイ属などの総称とある。紅蜀葵(こうしょくき)、天竺葵(てんじくあおい)とも。
静岡市の葵区、源氏物語の葵の上と六条御息所の争い、江戸幕府の象徴としての巴葵の紋所のことなども項を立てて載っている。
人名ではマモル。ミズーリ号で太平洋戦争の降伏文書に政府全権として調印した重光葵外務大臣がすぐ頭に浮かぶ。

川口松太郎の小説「新吾十番勝負」の主人公は、徳川吉宗の隠し子・葵新吾。「二十番勝負」もあり1960年代、映画、テレビで大川橋蔵などが人気を博した。こちらは姓が葵(あおい)だから辞書の人名、葵(マモル)とは全然別、ふと思い出しただけのことである。

なお、ヒマワリ(向日葵、学名Helianthus annuus)は、葵の字が用いられているが、アオイ科ではない。キク科の一年草。
タチアオイもヒマワリも向日性が共通しているからであろうか。
歳時記では、向日葵ひまはり、日車、天蓋草。太陽の動きに連れて動くというが、実際には花の蕾が開く時だけ日に向かうといやに詳しい。

向日葵の一茎一花咲きとほす 津田清子

ビロウ(Livistona chinensis、蒲葵、枇榔、檳榔)も葵の文字が使われているが、こちらはヤシ科の常緑高木。漢名は蒲葵、別名ホキ(蒲葵の音)、クバ(沖縄)など。古名はアヂマサ。古事記に出てくる「あぢまさの島」はこれ。
しかし、台湾に観光旅行に行った時にあちこちで目にした名物のビンロウ(檳榔、学名Areca catechu)とは同じヤシ科ながらビロウとは別種である。
ビロウ(蒲葵)は、葵とは似ても似つかぬ。何故葵という字が使われたのか、手掛かりさえなさそうで不明である。不思議としか言いようがない。
日本では馴染みが薄いからか、歳時記にはみつからなかった。

同じくワサビ(山葵)は、「山の葵」と書くが、アブラナ科ワサビ属の植物でこれもアオイ科では無い。こちらは、ご存知、食用、日本原産の香辛料である。根をすりおろすと独特の強い刺激性のある香味を放つ。刺身、鮨好きには欠かせぬもの。静岡、安曇野のわさび漬けも結構なもの。
山葵の葉はフタバアオイの葉に似ているから、葵の字が充てられたのだろうか。
歳時記では、山葵、山葵田、わさび沢が春、山葵の花が夏の季語。

夜の膳の山葵の花をすこし噛み 能村登四郎

なお、家紋に使われる葵(徳川家の「三つ葉葵」、下鴨神社の「双葉葵」など)は、アオイ科とは別科であるウマノスズクサ科のフタバアオイの葉をデザインしたものだそう。なるほど葉がそっくりである。
京都三大祭りの葵まつりは下鴨神社の夏の大祭 。神社の葵の紋に由来する。
家人が散歩中に、黄門様の印籠の葵の紋所と、タチアオイの葉があまり似ていないと言っていたのは、正しかったのである。

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アオイ科(Malvaceae)は双子葉植物の科のひとつで、分類では約75属もあり、種も1500と多い。
美しい花をつけるものが多く、上記のタチアオイのほか、観賞用の①ハイビスカス、②ムクゲ、③フヨウのほか、食用の④オクラ、また⑤ワタや⑥ケナフなど繊維として利用されるものもある。注意してみると、なるほど確かにこれらは花がよく似ている。面白そうなので、調べて見た。

長くなるので、ここまでを⑴、以下を⑵とした。

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