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アルブレヒト・デューラーの水彩画 [絵]

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アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer, 1471年- 1528年、57歳で歿)は、ドイツニュルンベルクの生まれ、ルネサンス期の画家、版画家、数学者。
ラファエロ・サンティ、やレオナルド・ダ・ヴィンチと同時代の人である。
宗教画、肖像画など多岐にわたる絵を油彩、木、銅版画、水彩画など多くの絵画技法で描き、夥しい数の作品を残したドイツ絵画史上最も偉大な画家といわれる。
なかでも植物、動物、風景のすぐれた水彩画を残していて、水彩画の最初期の代表的作家である。よって水彩画、風景画に芸術的価値を見出したいわば最初の画家とされ、まさしく水彩画の父、水彩画のパイオニアである。
それら水彩画の作品は、1502年作の「野うさぎ 」や1526年作の「百合」などに代表される。数多くの牧草地での優雅な静物や動物画だが細密画を思わせる緻密な、まるで生きているような描写が特徴である。
「アルコの景観」(1495年 水彩とグヮッシュ)など風景画も魅力的だ。500年以上も前の水彩画なのに、彩度は落ちているといえ、色彩はなお今になっても鮮やかさを失っていない。この当時の水彩絵の具は、自然の顔料を基にしたもので、透明度も低いものだったのであろうと思われる。
13歳、22歳、26歳時の 魅力的な自画像もある。自画像を作品として描いた初めての画家だったとも言われている。
デューラーの父は、ハンガリーからニュルンベルクに移住してきた金銀細工師であるが、デューラーの作品には 金細工師の子らしく金彩によるAとDの独特なサイン(モノグラム)が印されている。絵画にモノグラムを記したのも彼が最初だと言われている。

さらに木・銅版画家、さらに遠近法、測定論などの絵画技法の研究者でもあった。
木版画「犀」(1515年)は、デューラーが実物を見ずに描いたと言われているが、その想像力には感心する。この絵がヨーロッパで評判になったことはごく自然なことだが、遠く江戸時代の日本にまでたどり着き、ちょんまげを驚かせたと聞くと恐れいるばかりだ。

また有名な銅版画に「メランコリアⅠ」(1513-14年)がある。
天使が頬杖をついている絵。一度見たら忘れられないインパクトの強い絵だ。
頬杖のポーズは憂鬱気質をあらわし、天才の資質でもあるとされる。
古代ギリシアの衛生学から生まれた四大気質の一つである「憂鬱質」の「憂鬱」をテーマにしたもので、天使が憂鬱に沈んでいる。しかし、目だけは鋭く光って尋常ならざる顔貌である。
天才の挫折をあらわすとか、霊感を受けている場面であるとか、さまざまに解釈されて色々なところで取り上げられて話題になる絵である。
四大気質は中世の医学常識であった。他の三つは「多血質(遠望する鷹匠)」「胆汁質(激情による自傷)」「粘液質(冷静な計算)」というが、さすがに18、9世紀になると医学上無視されるようになっている。
この説では憂鬱は体液の黒胆汁のせいであり、怠惰にもなると考えられていたが、ルネサンスに入って哲学的・芸術的な瞑想と結びつけられるようになった。

この絵には魔方陣をはじめとして、彗星、多面体の石、痩せた犬、梯子、大工道具、コンパス、秤など寓意的な画題がいくつも描かれており、様々な解釈がある。
このうち魔法陣もよく話題になるが、その和34は(女性数の最初2と男性素数17(ピタゴラス学派では不幸とする)の積と言われる。

このようにデューラーは多くの新しいことを試み、ラファエロやダヴィンチらと同じようにまさにルネッサンスの風を感じさせる画家であるが、水彩ファンとしては水彩画の先駆者として細密画風の絵だけでなく風景画にも学ぶべきものが多いのにはあらためて驚く。水彩の風景画はその後永きにわたってヨーロッパの画家に好まれ、細密画の植物画はボタニカルアートと発展して継承されていくことになる。

デューラーの画集を見ていて、なかでも目についたのは、崖らしきところを描いた具象画ながら抽象的な一枚の風景画。淡い黄色を基調に赤や暖色系の茶色を配し、現代の画家が描いた水彩画と言われても分からないのではないかと思う印象的な絵だ。

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500年も前にこのような水彩画が描かれていたとは、しみじみと感慨深いものがある。


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