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マッケとマルクの水彩画 [絵]

二人はともに20世紀初頭に活動したドイツの画家である。
1911年カンディンスキーとともにアウグスト・マッケとフランツ・マルクはドイツ表現主義のグループ「青騎士」(デア・ブラウエ・ライター)を結成した。
マッケとマルクは、ともに第一次世界大戦で戦死、27歳と36歳の若さでの早世であった。
これだけ共通点があれば、水彩画を並べてみても良いのではないか、と思うのがアマチュアである。比較して共通点や違いを見ると、少し分かった様な気がするのである。ような気がするだけで、実は何も理解していないのかもしれないのだが。手がかりが他にないというだけの話でもある。

なお、カンディンスキーの水彩画は「抽象水彩画」で既に見たが、画風も目指すものもあまりにも二人とは違いすぎる。

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マッケはかなりの数の水彩画を描いており、水彩画家としての後世の評価が高いが、マルクは基本的に油彩画家であろう。代表作も殆ど油彩だ。
だから、マルクの方が年上だがマッケを先にした。また、マルクの水彩画は、わが画集は水彩画となっているが別のところでは同じ絵が油彩と書いてあったりして厳密さに欠ける絵もある。水彩、グワッシュ、テンペラ画は似ているものもあってシロウトに区別がつかないものもある。油彩ですら透明感を強調して描けば一見水彩画風に見えるものもあって難儀だ。とくに写真画像の場合は深刻な問題である。

アウグスト・マッケ(August Macke, 1887年 - 1914年、27歳シャンパーニュの戦いで歿)も、1910年代にカンディンスキー、マルクらとともに当時の前衛美術運動だった「青騎士」のグループに参加し活動した。
マッケは27歳の若さで戦死したため、その活動期間はほんの数年間にすぎなかったが、単純化された形態と幻想的な色彩を特色とする彼の絵画は、表現主義とも抽象絵画ともまた異なる独特の様式を創り出した。色彩の詩人と呼ぶ人もいる。
言われてみるとヘルマン・ヘッセの水彩画に似ているような気もする。

マッケは1910年、ミュンヘンで初個展を開催中であったマルクに会い、翌年にはマルクの住んでいたドイツバイエルン州ジンデルスドルフに滞在している。また、1911年から翌年にかけてクレーやドローネーと知り合っている。マッケはこれらの画家たちから影響を受け、中でもドローネーの色彩の影響が強く影響しているとされる。
ロベール・ドローネー(Robert Delaunay, 1885年-1941年、56歳で没する)は20世紀前半に活動したフランスの画家でカンディンスキー、モンドリアンらとともに抽象絵画の先駆者の一人である。代表作に「エッフェル塔」がある。フランス人の画家としてはもっとも早い時期に完全な抽象絵画を描いた人物の一人として知られる。妻ソニア・ドローネーも画家。

1914年(没年)マッケはクレーらとチュニジアに旅行する。チュニス、ハマメット、カイルアンなどの都市をめぐり、わずか2週間ほどの滞在であったが、チュニジアの風景と鮮烈な色彩は画家たちに強い衝撃を与えた。マッケはこの旅行中に彼の代表作に数えられる数十点の水彩画を残し、後世水彩画家としても高く評価されることとなった。

この旅行は、同行したクレーにとっても、画風の転換をうながす重要なものであったとされるが、その説に異論が出ていることについては前に書いた。

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「Self portrait 」(1906 Oil)
「ミューズ」(1908 水彩)初期の絵。
「Portrait of Franz Marc 」(1910 oil)7つ年上のマルクを描いた。
「Afternoon in the Garden」(1913 Watercolor )
「Portrait with apples (Portrait of the Artist's Wife)」(1909 油彩)美しい妻の絵を何枚か油彩で描いているうちの一枚。
「ショー・ウィンドウ」(1913)
「View into a Lane 」(1914 Watercolor )小径の眺め
「チュニス近郊サンジェルマン」(1914水彩)
「Donkey Rider 」(水彩)
「Garden on Lake Thun 」(水彩)
「Kairuan Ⅲ 」(1914水彩) カイロアンはチュニジュアの古都
「カイロアン」(1914水彩) 死の直前の絵といわれる。

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フランツ・マルク(Franz Marc, 1880年、ミュンヘン生まれ - 1916年にヴェルダンの戦いで戦死、36歳)は、動物が好きで愛情溢れるまなざしをもって動物を描いた画家として知られる。彼の作品は、馬、牛、猿、鹿、ロバ、狐、虎などの動物や森を主たる対象としたが、極めて豊かな色彩にあふれた作品である。しかもそれは実際の動物たちの固有の色彩からおよそ違ったものも多い。
ウキペディアによれば、「マルク本人の死後のことであるが、青い馬を描いた作品などは、自分自身古典的な作風の絵を描いていたヒトラーから「青い馬などいるはずがない」として「退廃芸術」作品と決め付けられた、という逸話も残っている」とある。
画家としての活躍はわずか10年ほどと言われる。動物を描くことで一番何を表現したかったのか。動物たちの目は瞑っているもの、大きく見開いているものそれぞれだがみな優しい。

晩年には、カンディンスキーと同様に作品の抽象化が進み、1914年の「戦う形 (Fighting Forms)」のように、具象を残しながらも、カンディンスキーに近い抽象絵画といっていいような絵になっている。
「Sleeping Deer 」(1911 Watercolour )
「Two horses, Red and Blue」(1912 Watercolor on paper)
「Animals 」(1913 Watercolour on paper)
「Dead deer 」(1913 Watercolour on paper)
「Horse Asleep」(1913 Watercolor and ink on paper)
「Mountain Goats」( 1914 Watercolor )
「Birds 」(1914 Oil on canvas)
「Fighting Forms 」(1914 Oil on canvas)

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二人の水彩画の画風は大きく異なる。マッケの方が水彩画らしいというのが大方の見方であろう。しかしマルクの動物の絵の水彩画も油彩に劣らぬ魅力に溢れる。仮に油彩の下絵として描いたにしても独特の味合いがある。それは彼の絵の線がもたらしているように自分には見える。むろん油彩、水彩(グワッシュもある)に共通した線だ。
78歳まで生きたワシリーカンディンスキーのように、マルクがあと3、40年も長く絵を描いたら、やはりアブストラクトを描いたような気がする。
しかし、マッケの場合は、彼の抽象画を思い描くのはかなり難しそうだ。

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