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セザンヌとゴッホの水彩画(1/2) [絵]

巨匠二人を並べるなんて何と無茶なと言われること、間違いない。
だが、以前からセザンヌの水彩画を素晴らしいという人がいるのに、何故ゴッホの水彩画は良いという声を聞かないのか、自分のことで言ってもセザンヌの水彩画は好きだが、ゴッホの水彩画はそれ程となぜ思わないのか、という疑問が気になっていた。
水彩教室のクラスメートにもセザンヌ好きは多い。展覧会の図録集だが、セザンヌ水彩画集を持っているという羨ましい人までいる。
かたやゴッホの方は油彩が人気抜群で、思うに油彩の画集しかないのではあるまいか。
むろん、好きな絵とか良い絵だとかは、個人の好みの差があり過ぎ、とくに絵の良くわかる人、勉強をしている人そうでない人などにもよるだろうから、あまり意味がない疑問ではあろう。

とくに、自分の場合はゴッホの水彩画をあらためてじっくり見たことがないからではないかと思う。
それなら並べて見てみようと思っただけのことで他愛ないといえば他愛ない。

セザンヌの水彩画が好かれる理由は、専門家はどう整理しているのか知らないが、自分の場合でランダムに言えば、
①素描にさらりと水彩をぬり、白地が生かされ余白が残されている。線が最小限に抑えられ色が線に勝っている。塗り残しに味がある。自然に、観る人がそれを補完して見る、それが楽しく心地良い。
②未完成のようだが、たぶん意図を持って筆をおき完成度は見た目と異なり高い。
③油彩の練習、下絵でなく水彩画として描いている。水彩の良さを追求している。
また、逆に油彩にも水彩の技法というか、良さを取り入れようとしている。
④透明感を強調するために、①と違うが、素描なしで水彩絵の具のみで描いているものもありこれも味がある。

一般的に言われているように、描いてあるものと描いてないもの、つまり余白の扱いが絶妙ということであろう。
塗り残すというのは、実際にやってみると非常に難しい。どうしても色を置きたい誘惑が強く抗しがたい。いい加減な未完成作品、中途半端な絵になるような気がするのだ。
どうしたらやめることができるのか。ここでやめた方が色をつけた時より良い絵になるという確信が必要で、自分の力に自信がないと出来ない。
また絵を見てくれる人にはそれだけの鑑賞眼があるはず、という信頼がないと出来ないと誰かが言っていた。
凡人(つまり自分のことだが)にはそれができないのだろう。止められず色を重ね、汚れた、暗い絵にしてしまう。

さて、巨匠セザンヌが独特の画風と呼ばれるものに到達するのは、一般的に1885年頃のことと言われている。画家は1839年生まれだから、46歳頃ということになる。
画風を確立したセザンヌの絵は、絵画史上革新的な影響を及ぼしたとされる。晩年の彼の絵もまた、後世の画家に多大な影響をもたらしたことは、自分などの言うまでもないことである。

そのセザンヌが本格的に水彩画を描くようになるのは、この画風確立期に当たる1885年頃のことだとされており、意外に遅いと言えよう。
むろんそれ以前、1864年(25歳)頃から1880年(41歳)頃の若い時の良い水彩画もあるのは言うまでもないことであるが。

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「Seascape 」(1864)
「House in Provence 」(1867)
「The Manor House at Jas de Bouffan 」(1870)この3枚は普通の水彩画に見える。1870年は画家31歳。
「Pool and lane of Chesthut Trees at Jas de Bouffan 」(1880)この辺りから水彩はトーンが変わる。
「The Oise Valley 」(1880)
「Trees」(1884)
「Study of an apple 」(1885)
「Curtains 」(1885) 昔から大好きな絵。カーテンの後ろから人が出てきそう。
「Madame Cezanne with Hortensias 」(1885 ) Hortensiasは西洋アジサイ。塗り残しの典型。淡彩が人のイメージを一層膨らませる。

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「Man with a Pipe」( 1895 )おなじみトランプ遊び(油彩)の習作か。
「Self-Portrait」(1896 )油彩の自画像は多いが、水彩は珍しい。
「In the Woods 」(1896 )
「Pot of Geraniums」(1885 )花は描いてないが赤いゼラニウムが目に浮かぶ。
「Flower Pots 」(1887)
「Foliage」( 1900 ) Foliage は葉のこと。葉に花が隠れている気がする。
「Ginger Jar and Fruits on a Table 」(1888-90)
「Trees by the water」( 1900)
「Mont Sainte-Victoire 」(1903 )油彩の有名な巨匠の代表的な風景画。油彩が多く水彩は少ない。

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「Roses in a Bottle」( 1904)何もかも描いてしまう自分には参考にすべき絵。
主役のバラさえ白く塗り残しているが、真紅の薔薇に見えるのが不思議。
「Still Life with Green Melon」(1906 )
「Still Life with Watermelon and Pemegranates」( 1906)水彩の静物は、油彩のそれと趣きが異なるように見える。
「Mill of the River」( 1906 )
「Jordan 's Cottage 」(1906 )同じものを油彩でも描いているので並べてみた。
「Peasant in Straw Hut」( 1906 )油彩に「農業者の肖像」や似た「庭師」の絵がある。水彩の人物も他に「赤いベストを着た少年」などがあるが、水彩と油彩ではかなり趣きが異なる。
「River at the bridge of the three sources」(1906)

セザンヌの水彩画を何枚か選ぶのは、良い絵ばかり数が多いだけに難しい。若い時のもの、本格的に取り組んだという1885年前後のもの、晩年(没年1906年)のものと分けて見たが、結局好きな絵を並べただけに終わって、鑑賞眼の力不足の悲しさでその差異は分からずじまいだ。

セザンヌの水彩と油彩を同じモチーフの絵で比べると、一言で言えば「距離」があるように思う。距離という表現が適切ではないが、風景画、人物画、静物画それぞれ趣きが違う気がする。巨匠はその間を往還し、愉しんでいるような風情だ。
それは水彩画が油彩に劣らず素晴らしいという証左であるように、自称「水彩画好き」のアマチュアには思える。

セザンヌとゴッホの水彩画(2/2)は次回に。

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