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ウジェーヌ・ドラクロアの水彩画 [絵]

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早いものでもう9年も前になるが、水彩画教室に通い始めたころ、画集を見ていて惹かれた絵がドラクロアのこの絵「Jewish Bride ユダヤの花嫁 」(1832 水彩 ルーブル美術館所蔵288 ×237mm)であった。こんな絵が描ければ良いなと思った記憶がある。

フェルディナン・ヴィクトール・ウジェーヌ・ドラクロワ (Ferdinand Victor Eugène Delacroix、1798年 - 1863年 65歳で歿) はフランスの19世紀ロマン主義を代表する画家。
ドラクロアの代表作は、有名な「La Liberté guidant le peuple 民衆を導く自由の女神」(1830年、油彩260×235 cmルーヴル美術館所蔵)であるが、2年後に描かれたこの静かな佇まいの水彩画がおなじ画家のものと思うと不思議な気さえする。
2枚ともルーブル美術館所蔵品であり、油彩の実物は観た記憶があるが水彩はない。もし展示されていたとしても見落としたに違いないと思う。
2枚はテーマ、画材(OilとWatercolor)、タブローとスケッチ、絵の大きさ(水彩画は、油彩の10分の一)の違いだといえばそれまでだが、それぞれが人に与える印象は天地ほどの差があるように自分には思える。

ドラクロアは1832年、34歳のときフランス政府の外交使節に随行する記録画家としてモロッコ、スペイン、アルジェを訪問した。
そのときに、この「ユダヤの花嫁」の絵をはじめとして、何枚かの水彩画を描いている。記録のためのスケッチであろうが良い絵が多い。
「Moroccan Women 」(1832 水彩 )「モロッコの女性たち」
「Mounay ben Sultan 」(1832 水彩 )別題 「Sketch for the Women of Algiers アルジェの女たちのスケッチ」
「Two Women at the Well 」(1832 水彩 )「泉の二人の女性」

これもドラクロアの代表作のひとつである「Femmes d'Alger dans leur appartementアルジェの女たち」(1834年、油彩 ルーヴル美術館所蔵)は、モロッコ旅行の際のデッサンをもとに制作したものである。水彩の「ユダヤの花嫁」を描いた2年後である。

ドラクロアは他にも良い水彩画がある。

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「A Mandarin drake 」(date unknown ) drakeは雄鴨。おしどり(mandarin duck)のことか。
「A Turkish Man on a Grey Horse 」(date unknown )「灰色の馬に乗ったトルコ人」昔の少年雑誌の挿し絵風。
「Horse 馬」(日付不詳)
「Horse Frightenend by a Storm 」(1824 )「嵐に飛ばされた馬」ドラクロアは虎も描いた。動物好きだったのだろうか。
「The Coast of Spain at Salabrena 」(1832 )サロブレーニャはスペインアンダルシアの港町。
「Fan with Caricatures 」(1838 )「漫画の扇」。描かれている人物を知ったら面白いのだろうが。英風刺漫画ジャパンパンチ絵(ポンチ絵)に似ている。
「The Edge of a Wood at Nohant 」(1842-43)ノアンは仏中央部ジョルジュサンドの別荘があった地。画家はショパンを訪ねたのであろう。
「Bouquet of Flowers 」(1849-50)水彩、グワッシュとパステルが使われている。
「Cliffs near Dieppe 」(1852-55)ディエップは仏ノルマンディーの港町。その近くの崖の風景。

どの画家もそうだが、油彩の良い絵の後ろに素描はもちろん水彩やグワッシュ、パステルなどの習作がある場合が多い。下絵というが、勿論独立した絵としても見ることは出来る。出来上がった本制作品とは違った魅力を放つ絵も多い。
ドラクロアの水彩画「ユダヤの花嫁」などは、その典型であろう。下絵そのものではないけれど、色付きデッサンとして「アルジェの女たち」のもとになっているのであろう。だが、これだけを見てもしみじみ良いなと思うのである。水彩のもつ独特の味がある。色と光と影のゆったりとした雰囲気が、見るひとの心を静かにする。

余談をひとつ。
ドラクロアの(油彩であるが)肖像画で有名なのは自画像のほか、親友だったショパンのそれ。あわせて彼の恋人ジョルジュサンド。2枚とも1838年のものだ。もともと1枚の絵を誰かが切り離したとする説がある。まさかと思うが。
作曲家でヴァイオリン超絶技巧奏者パガニーニ(1782-1840)の全身像(制作年不詳)もある。ドラクロアが奇人とも言われた音楽家とも、肖像画を描くほど親交があったのかどうかは知らない。
パガニーニは悪魔に魂を売り、代償に難易度の高いヴァイオリンの演奏技術を手にしたとまで噂をされたという逸話の持ち主である。連想で某田中女史が奇人変人だと口走った、某元首相が好きでよく聴くと言っていたのを新聞か何かで読んだことを思い出した。ヴァイオリン協奏曲4番だったか。奇想曲だったか。

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蛇足もひとつ。
我が家で2000年ごろから毎年使っている大版のカレンダーは、現代人気作家のミッシェル・ドラクロアの絵である。彼は1933年パリ生まれ。いま80歳だが現役なのだろうか。日本でもファンが多いらしい
某社が飽きずに作り、送ってくれるので飽きずに壁に掛けて眺めている。ミッシェル・ドラクロアは古いパリ(young city)の街並みを飽きずに描いている。
ウジェーヌ・ドラクロアとは別人の油彩画家。無論この稿と関係はない。




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