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ジョン・マリンの水彩画 [絵]

ジョン・マリン(John Marin、1870年- 1953年)は、20世紀前半のアメリカのモダニズムを代表する画家、版画家。水彩画を主に描いた。日本ではメアリンと表記することも。
ニュージャージー州生まれ。ペンシルベニア美術学校にて絵画を学ぶ。
1905年、35歳の時にパリに行き6年間ヨーロッパに滞在、この時セザンヌ、フォーヴィスム、表現主義、キュービズムなどを学んだといわれる。
ヨーロッパには晩年のアメリカの画家ホイッスラー(1834-1903)が滞在しており、マリンがホイッスラーに影響されたことは、絵をみれば容易に推測できる。

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帰国後ニューヨークの摩天楼やハドソン川、ブルックリン橋に強く魅せられ、都会的な対象物を、具象と抽象の中間ともいえる独特な画面構成で、ダイナミックなタッチによって描く画風を確立して世に認められる。しかし、もともと建築家で画家としてのスタートは、40歳前後であり遅い方であろう。

水彩風景画家としての評価が高いが、50歳(1920年)代に入り油彩画にも力を入れるようになる。
1914年、44歳で結婚、米最東北部メイン州に妻と住む。そことNYとの間を行き来したのであろう。大都市(urban)とメイン周辺の海岸(rural)の自然溢れる風景を描き続けた。その地メインで83歳の生涯を閉じる。

ウインスロー・ホーマー以後のアメリカにおける最高の水彩画家とされ、今でもアメリカ国内で人気が高い。
それは、大胆な構図でしかも躍動感溢れる線と透明感のある色彩をもって描く卓抜した技法に加えて、アメリカらしい都市や風景を題材に、急成長期の「アメリカそのもの」を表現したことが、アメリカ人の心を捉えたにちがいない。

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まず躍動するアメリカの都市を描いた作品群から。いずれも水彩画。

「City Scene 」(1909 Watercolor on paper )2枚とも同じ題名。現代の水彩画家が好んで描く風景に似ている。人がいるが、車はない。

「Freight yard (Warehouses and North River)」(1910 )「貨物置き場(倉庫とノースリバー)」

「Brooklyn Bridge 」(1912 Watercolor and charcoal on paper )2枚あるが、およそ趣が異なる。大きな橋の方は、半透明の絵の具が時雨のような不思議な効果を生み出している。都市の空気感。マリンは好んでブルックリン橋を描き、彼のデビュー作、かつ代表作となった。

「Woolworth Building No.28 」(1912)ウールワースは当時世界一の高層ビル。マリンは都市風景に建築物を入れる。もともと建築家だっただけに、特別の思い入れがあるように見える。

「New York Fantasy 」(1912)

「St.Poul's,Manhattan 」(1914)NYマンハッタンのビル街にあるセントポール寺院。昔見たことがある。ひどく黒かった記憶が残っている。

「New York from the FerryフェリーからのNY 」(1914 Watercolor and pencil on paper)
28×33cmの小さな絵。鉛筆の線とブルーの着色のほどあいが絶妙。自分としてはジョン・マリンの水彩のなかでこれが一番のお気に入りだ。自分ごときが言うのも変だがよほど抑制が効かないと、なかなかこうは描けない。

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次は、メイン州ストニントンなどの自然を描いた風景画。海岸、ヨット、島、夕日などが多い。

「Landscape,Castorland 」(1913)
「Marin Island,Small Point, Maine」(1915)
「green Hills,Rowe,Massachusetts 」(1918)

「Sunset,Maine Coast」(1919)抽象画風の風景画。半抽象画?。太い線とかすれが効果的。

「Boat with Sun ,Deer isle,Maine」(1921)これも抽象と具象の中間的な絵。

ボートはどれ?といった感じ。
「Stonington,Maine」(1921)家らしきものがあって風景画とやっとわかるマリンらしい独特の画面構成。

「The Four Master 」(1921)線はグラファイト。

「Street Movement 街路の動き」(1936)ジョン・マリンに人物画、静物画は、ほとんどない。自然を描いた風景画にも点景としての人がいないのが特徴。この絵に人が大きく描かれているのは珍しいくらいだ。
またマリンにはムーブメント…という題名が多い。風景画にも動きを重視したのであろうか。線に動きがある。

「Setting Sun(Sunset near Stonington 」( 1945)マリン75歳の絵。
「St.Jhon,New Brunswick 」(1951 )ジョン・マリン81歳、晩年の水彩画。

マリンは18歳頃の若いときから水彩画を描き、建築家から画家に転身したという他の画家とは違ったキャリアをもつ。また、中年を過ぎてから油彩にも取り組んだというのも、余り例がないのではないか。

ホーマー(1836-1910)のリアリズムから抜け出し、ホイッスラーの「黒と金色のノクターン 、落下する花火」のような省略化、単純化の影響を受けつつ抽象画一歩手前で踏みとどまっているかに見える特異な画家であった。

「アーバン」「ルーラル」の一連の作品を並べてあらためてみると、ジョン・マリンは、後に油彩も描いたといえ、やはり水彩画家だったなと思う。しかも、独自性の高いレベルに到達した水彩画家であった、と言って良いと思う。

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晩年に描かれた絵を見たい。
わがe画集では、以下の絵はマテリアルが明記されていなかったので、不明確なのが残念。しかしながら、マリンは高齢になっても水彩、油彩ともに、独自性を失わずしかも力強いのに感心してしまう。

「City Movement」( 1940 )たぶん水彩だろうと思う。70歳。
「Tunk Mountains ,Autumn ,Maine」(1945)これは油彩に違いない。赤や黄、ブルーがあざやか。75歳。

80歳から83歳のときの最晩年の作品は、いずれも油彩と思われるが、トーンはなぜか水彩画風に見える。

「Movement in White, Umber, and Cobalt Green」 (1950)「白、アンバーとコバルトグリーンの動き」アンバーは茶色。水彩のように見えるが、どうか。

「Autumn Coloring No. 4 」(1952)秋というより冬のイメージ。上掲の75歳のときの作品「Tunk Mountains ,Autumn ,Maine」の秋とは様変わりしている。

「Apple Blossoms, Saddle River 」(1952 油彩とある)「林檎の花、サドル川」、早春の花であろうが、華やぎはない。

「Spring No.Ⅱ 」(1953)油彩であろう。春と題しながら、赤や黄は使われていない。

これら80を過ぎて描いた絵は、明らかに70歳代までのマリンの絵とは違っている。
色の数が減り、アブストラクトの度合が強くなっている。それだけ精神性が高くなっているように自分には思える。四季を描いたものが多いが、画家は何の精神(スピリット)を描こうとしたのだろうか。若い時に熱中した「躍動するアメリカの精神」ではないことは確かだが。

1953年は画家が83歳で亡くなったその年である


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