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ウジェーヌ・ルイ・ブーダンの水彩画 [絵]

ブーダンに「これぞ水彩」という絵がある。知っているか?とわがカルチャー教室の喫茶室で長老から訊かれた。
長老Oさんは90歳を超えているが、元気に絵を描き、最近こそ時には休むが、教室に20年以上通っている。誰が見ても素晴らしい絵を描く。クラスメート皆が、絵と人柄に一目をおく存在だ。
不勉強で恥ずかしながらブーダンなる画家を知りませんと答えた。一瞬、もしかするとあの絵を描いた画家ではないかと思ったのがある。だいぶ前に画集で面白い絵だとPCの「好きな絵ファイル」に取り込んでいたのを家に帰って見たら、まさしくそれであった。
ブーダンの「Drinkers on the Farm at the Saint-Simeon サン シメオン 農場の酒飲み達」(1867 Watercolor and pencil on paper)である。サン シメオンはフランスノルマンディーにある地。
ただ長老の「これぞ水彩」という絵は写真で見せて貰ったが、帆船を描いた絵だったのでこれとは違う。

ウジェーヌ=ルイ・ブーダン(Eugène-Louis Boudin, 1824年 - 1898年 )は、19世紀フランスの画家。ノルマンディーのオンフルール生まれ。ドービルで歿。74歳。
外光派の一人として印象派、特に「光の画家」といわれるモネに影響を与えたことで知られるという。わが知識の乏しさに恥じ入るばかりであるが、気をとり直してあらためてじっくり画集を見た。
ブーダンは、基本的には風景を主に描いた油彩画家で多作である。水彩画は習作ないし下絵が多いようだ。長老は、パステルにも良い絵があるとおっしゃっていた。確かにパステルにも素晴らしい風景画がある。一枚だけあげると、
「White Clouds,Blue Sky 白い雲と青空」(1859 pastel on blue-grey paper )。

ブーダンは、青空と白雲の表現に優れ、ボードレールやコローから、「空の王者」としての賛辞を受けたというだけある。
なるほど油彩もパステルも空を広くとり、朝焼け、夕焼け、晴れ、曇り空の千変万化の空を余すところなく描く。海も良く描き「海景画」というジャンルも創り出す。例えば、これも一枚だけあげると、
「Deauville ,the Harbor ドービル 港」(1897 oil on canvas)。

だが、ブーダンの水彩画はちょっと趣きが異なり、得意の空をを描いたものが少ない。

画家は皆そうだが、惹かれたモチーフを何度も繰り返して描く。描きたいものに惹かれて描くのだから当然で、後から見るものが、残された絵を見れば、画家が何を描きたかったかがよく分かる。
ブーダンであれば、空、海であり、ノルマンディー、トルビルのビーチ、ドービルの港、帆船などである。牛や馬、川岸で洗濯する多勢の婦人の絵もしかり、同じような絵を何枚も描くのだ。

このうち、ブーダンの水彩画はトルビルのビーチで遊ぶ人々を描いたものが圧倒的に多いようだ。理由は良くわからない。。
当時のファッションであるクリノリンスカートを身につけた、ご婦人方が海辺で遊ぶ様を何枚も描いている。
クリノリン(crinoline)は、1850年代後半にスカートを膨らませるために考案された鯨ひげや針金を輪状にして重ねた骨組みの下着のこと。社交界で大流行したが、余りに機動性が低く事故もあったりしてすたれた。ヴィクトリア朝のシンボルファッション。

ブーダンが惹かれて水彩で描いたのは、少なくとも海や空ではなさそう。社交場と化した海辺の賑わい、ご婦人の身につけたカラフルで華やかなクリノリンか、風景画家ブーダンの違った一面である。
油彩のための習作だが、同じテーマの油彩も沢山あってどの下絵なのか特定できそうにもない。
そのせいか、独立した水彩画として見ても面白い。以下出来るだけ集めて見た。

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「クリノリン時代」は、1863-1873年前後のほぼ10年間にわたる。1880年のものはなく、1895年頃になると川岸の洗濯婦人(Laundress)ばかりになる。Laundressの水彩画はなぜか見あたらない。クリノリンがないからか。まさか。

「Crinolines クリノリン 」(1863 水彩、クレヨン)
「Afternoon on the Beach 海辺の午後」(1865 水彩)
「Crinolinesクリノリン 」(1865 水彩)
「Trouville Beach トルビルの海岸 )
「Crinolines on the Beach 海辺のクリノリン」( 1866 水彩)
「On the Beach海辺で」( 1866 水彩)
「Young Women in Crinolines on the Beach海辺のクリノリンを着た若い女性 」(1866 水彩)
「Trouville トルビル 」(1868 水彩)

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「Scene on the Beach海辺の情景」( 1870 水彩)
「Beach Scene,Trouville トルビル海岸の情景 」(1873 油彩)油彩もたくさんあるが1枚だけ並べて見た。
「Crinolines on the Beach海辺のクリノリン」(1872-73水彩)
「Beach Time 海辺の時間」(Date unknown水彩)
「Crinolines クリノリン」(Date unknown 水彩)
「Crinolines on the Beach 海辺のクリノリン」(Date unknown 水彩)
「On the Beachビーチで」( 1863 水彩、パステル)珍しくパステルを併用している。
「A Woman on the Beachビーチの婦人」(Date unknown 水彩)

image-20130903183756.png

以下は、クリノリン以外の水彩画。
「Exiting from Mass at Plougastel」( 1867-70 水彩 )Plougastelはブルターニュのダウラス。「ダウラスのミサから出て来る 」と訳せば良いのか。
「Fish Market 魚市場」( 1870 水彩)動きがあって良い絵だ。
「Study for 'Marines Landing in Brest Harbor' 習作 ブルターニュ港に上陸する海兵隊」(1870 水彩)
「Seascape 海景」(1871 水彩)「これぞ水彩」に似ているが、ちょっと違う気もする。Oさんに確かめてみる必要がある。
「Landscape with Sanest 夕焼けの風景」( 1880-90 水彩、黒クレヨン)これぞ長老Oさんの普段描かれる絵にそっくり。やっぱりーという感じ。
「Harbor Scene 港の情景」(1882 水彩)
「Racetrack at Deauville ドービルの競馬場」(1866 水彩)
「Breton Family by the Fireplace暖炉のブルターニュの家族 」(Date unknown 水彩、グヮッシュ)
「Cows near the Shore 海岸の牛」( Date unknown 水彩)
「Figure Study人物習作」( Dateunknown 水彩)
「Market Scene 市場の情景」( Date unknown 水彩)

ブーダンは1870年代に、ベルギー・オランダと南フランスを旅し、1892年から1895年(71歳のとき)には、ヴェネツィアに滞在した。油彩であるが、オランダの風車のある風景画やベニスの運河の風景画の傑作をものしている。

こうしてみるとブーダンの水彩画は一時期に描かれ、テーマも比較的限られているように見える。何故なのか。
また、晩年1890年代の水彩画が残っていないのはどうしてだろうか。油彩ばかり描いたとも思えないのだが。分からないことが多い画家だ。

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