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エドワード・ホッパーの水彩画 [絵]

エドワード・ホッパー(Edward Hopper, 1882年 -1967年 85歳没)は、20世紀アメリカの具象絵画を代表する画家である。ニューヨーク州ナイアック(Nyack)に生まれた。商業美術の学校に入学し、ニューヨーク美術学校(New York School of Art)で絵画を学ぶ。

ニューイングランドなどの都会の街路、オフィス、劇場、ガソリンスタンド、灯台、田舎家など都市やどこのもある郊外の風景を描く。単純化した構図と色彩、大胆な明度対比、強調された光と影で描くホッパーの独特の画風は現代のアメリカでも人気がある。

イラストレーターなどを経て、画家として世に出るのは遅い方だ。1920年(38歳)に開いた初の個展では、まったく買い手が現れなかったという。
40歳のときに水彩画に転じ、1924年に水彩画の個展を開いたところ、すべて売り切れた。アメリカは我々が考えている以上に水彩画の愛好家が多い。それ以来ホッパーは約10年間、水彩画家として活躍する。

50歳を過ぎて再び油絵を描くようになるが、生前は油彩画家として評価されることはなかった。彼の独特の画風が評価されるのはむしろ没後のことである。
街に人影は少なく、いても静か。お互い目を合わせない。見ている先に何も描いてない。陽射しは強く陰は濃い。
どこか曖昧な雰囲気もあり静謐を超えて孤独、不安な感じさえして来る。しかし、じっと見つめていたいような感じもある不思議な絵である。人の心理を読み尽くしたような彩度、明度、補色の扱いが複雑とされる。単純な直線を多用しているのが、逆にそれらの効果を高めているようにもみえる。

若い時の水彩画は、アメリカ水彩画の伝統を踏襲、特にホーマーの手法に近いが、よく見ると後の油彩画の特徴、特異性の兆し、片鱗は既に出ているような気がする。
風景画に全く人影がない。日差しと陰は強いが静かである。

以下、水彩画を制作年順に並べて見た。1820年から30年くらいまでのものが多いが、油彩画を描いた40年代以降のものも少しある。





「Deck of a Beam Trawler ,Gloucesterトロール漁船の甲板、グロスター」(1923 水彩 )
グロスターは、アメリカ 北東部ニューイングランドのマサチューセッツ州の小都市。Trawler はトロール漁船のこと。
「Houses of Squam Light , Gloucester スクアムライトの家、グロスター」(1923水彩)
左の傾いた一軒家は何だろう。
「Gloucester Mansion グロスターマンション」(1924水彩)
「Houses at the Fort ,Gloucester 台場の家、グロスター」(1924 水彩 )fortは砦、台場。
「Adobes and Shed ,New Mexico 天日瓦と小屋、ニューメキシコ」(1925 水彩)
「Reclining Nudeもたれる裸婦」(1924-27水彩 )水彩のヌードは珍しい。
「Adobe Houses 天日瓦の家」(1925 水彩)
「Cars and Rocks 車と岩」(1927水彩 )車に運転する人がいないので、停車中と分かるが走っているようにも見える。岩との対比がシュール。
「Light at Two Lights トゥーライトの灯台」(1927水彩 )このモチーフは油彩を含め沢山描いたらしい。
「Prospect Street ,Gloucester 街路の眺め グロスター」(1928 水彩 ) 右は同じ絵か、別の絵か判然としないがこちらの方が明るい。



「Adam's House アダムの家」(1928 水彩)
「Freight Car at Truro トルローの貨車」(1931 水彩)
「First Branch of the White River , Vermont ホワイトリバーの最初の分岐 バーモント」(1938水彩)first branch は、一番目の支流とでも訳せば良いのか。
「The Mansard Roof 寄棟屋根」(1842水彩 )水彩画の代表作のひとつ。外側の4方向に向けて2段階に勾配がきつくなる外側四面寄棟二段勾配屋根をマンサードという。バルコニーに風が吹いている。
「Jo in Wyoming ワイオミングのジョー 」(1946 水彩)42歳の時、二つ年下の女性ジョー・ノヴィソンと結婚。彼女も画家だが、ホッパーの絵のモデルはほとんどジョーという。
「自画像 」(1925-30油彩 )43歳頃。結婚直後。
「El Palacio 」(1946 水彩 ) 64歳の作品。

「House by the Railroad 線路脇の家」(1925 油彩 )ホッパーの最初期の連作の一つで、その後の彼のスタイルを決定づけた作品である。
「Nighthawks 夜更かし達」(1942油彩 )油彩画の代表作のひとつ。他に無人の「Rooms by the Sea 海のそばの部屋 」(1951 油彩)などがある。
「ナイトホークスのDrawing 」 この絵に限らずホッパーの本作の前のドローイング、スケッチは詳細を極め、緻密な事前準備をしていたことで有名。

右端の3枚は、珍しい制作過程、いずれも水彩。アマチュアの自分にはホッパーのメイキングを見るようで参考になる。

ホッパーは、20世紀のアメリカの豊かさの中の、空虚感や孤独感を描いた画家であるが、高年になってから描いた油彩の方が、その傾向が顕著だ。それを描くために多くの仕掛けを絵の中にして、あと見る人がそれぞれ考えてくれと言わんばかり。不安、孤独を抱えていない鑑賞者はいないので画家の思うツボにはまり、それでファンが多い。

若い時の水彩画には殆ど人が描かれていず、静かな風景画が多いのに何が彼を変えたのかは興味が湧くところだ。

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