SSブログ

中西利雄の水彩画 [絵]

中西利雄は、1900年(明治33)東京生まれ。水彩画もよく描き近代洋画の父と言われる浅井忠は、1907年に亡くなったので、次の世代ということになる。
東京美術学校洋画科卒。1928年にフランスへ渡る。翌年、大学同期の小磯良平とともにヨーロッパをめぐり、サロン・ドートンヌに多数作品を出品し、入選した。
1931年に帰国、1935年に帝展で「婦人帽子店」が、水彩画で初めての特選。翌年、新制作協会を小磯良平、猪熊弦一郎らとともに結成した。
透明水彩とグワッシュの併用により独自の水彩を描く。特に水彩による独特の人物画を試み成功する。浅井忠の水彩と異なり色彩面による輪郭、ときに黒い線を使った輪郭線など新しい水彩技法を確立した。水彩でも油彩と同じように描けると水彩研究グループ蒼原会を主宰 するなど一貫して水彩画の追求と向上に努めた。水彩を水絵と称した。
日本の水彩画の開拓者と評価される。

戦前の昭和画壇に新しい風を吹き込んだが、1948年(昭和33年)肝臓がんのために中野の自宅で逝去。48歳

image-20131127100233.png

渡欧の頃の作品3点。いずれも風景画。
「トリエール・シュール・セーヌ」(1930 昭和5)水彩54.5×69.5cm
 中西が滞在していた頃、パリから汽車で一時間ほどのところにあるセーヌ下流の小さな町トリエール・シュール・セーヌを描いたもの。中西本人が、「デュフィの影響も感じられる」と述べていると伝えられているが、画家は明るい透明感あふれるデュフィに惹かれたことをうかがわせる。滞仏中にサロン・ドートンヌに出品され、帰国後日本水彩画会展に特別陳列されたという。
「ノートルダム寺院 」(1930 昭和5)
「森のカフェ 」(1931)これもデュフィ風。

「婦人帽子店」(1935 昭和10)東京国立近代美術館所蔵。代表作。105×125cmと大きい。

「夏の海岸」(1936年、東京国立近代美術館) グワッシュで絵に落ち着いた深みを出している。
「人物 」(1936)
「和装 」(1937 15号)
「緑衣」( 1939 昭和14 ) 63.0×49.5cm。緑色の地に黒模様の和服が強烈。光は左からだが、その左側が暗い。「人物」も同じ。「和装」と 「H嬢」は逆。
「楽興の時 」(1940 昭和15)この絵や人物画はいわば大戦前夜の頃に描かれたものだが、明るい。 戦雲立ち込めるなかで、中西利雄の東京・中野のアトリエでは、「蒼原会レコードコンサート」がしばしば開催されたという。画家は音楽好きだったのである。
「H嬢」(1943 10号)黄緑色のテーブルと、その上のレモンイエローのノートのコントラストが良い。バックのブルーがそれを引き立てる。

image-20131127100247.png

「少女像(B )」(1942 S17 )75x56cm。戦時下ながらこれも明るい絵。顔や手の影は参考になる。
制作年不明だが、風景画3点。
「沢井村」1945年7月まで疎開していた神奈川県津久井郡の風景。
「風景」 水彩 36×51cm
「六月の真昼 」新小岩操車場かと言われている。

ところで、中西利雄の三つ下の小堀進は、若い頃蒼原会で勉強したこともある。不透明水彩であるが、中西利雄を最も良く引き継いだ画家と言えるのではないかと思う。風景画家だから、あるいは異論があるやも知れぬが。
理由は特にないが、共通しているのは明快な色調と近代的な感覚と言ったところだろうか。

小堀進(1904年 - 1975年 71歳で没落)は、茨城県出身の水彩画家である。水彩連盟の設立メンバー。水彩画家として初めて日本芸術院会員となる。
郷里の霞ヶ浦・水郷をはじめとした国内外各地の風景を、鮮やかな色彩と単純化した大胆な構図でダイナミックに描き、戦後の水彩画界にも大きな影響を与えた。

小堀進のグヮッシュを3点。
「虹 」(1947 S27)
「夕照」(1959. S34 )
「初秋 」(1969. S44)

我が国の水彩画の歴史について、初期の浅井忠、くらいは名前を知っているがほとんど知識がない。戦後ではいわさきちひろ、長沢節、安野光雅などをこのブログでも触れたことがある。
しかし、戦前はどんな水彩画家がいたのかも知らない。梅原龍三郎や鈴木信太郎も水彩を描いたと聞くが、どんな絵を描いたのか。
欧米の水彩画も興味があるが、日本の画家の水彩も気になる。プロでも試行錯誤もあったであろう。中西利雄や小堀進などの絵を見るとそんなことを思う。油彩へのコンプレックス、水彩の清澄感への尽きない憧憬などがない交ぜになっているところが面白い。

関連記事「長沢節の水彩画」
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2012-11-17

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。