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北斎展 [絵]

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家人が日暮里のセミオーダーメイドの洋品店へ行くというので、ついて行った。
観たいと思っていた上野の森美術館の「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」に寄りたいがためである。
洋品店は谷中銀座にあり、はじめて歩いたが「谷根千」はまさに観光地そのもので驚いた。
公園はデング熱が怖いので、上野駅構内で「更科そば」を食べてから展覧会に行くと、予想より入場者が多い。皆さん熱心に観るので、いっこうに前に進まない。
さすがに140点はどれも見応えがあるが、体力が足りず駆け足になったのは少し残念。二人とも疲れカフェで一休みして帰る。

代表作富嶽三十六景(1831前後)の「神奈川沖浪裏」( The Great Wave off Kanagawa グレートウェーブ)、 「凱風快晴」(Fuji,Mountain in Clear Weather 赤富士)はむろん素晴らしかったが、「本所立川」(Honjo Tatekawa ,the timberyard at Tatekawa)を良いなとじっくり観た。左手の木材を落とす人と受ける人の動きと緊張感がすばらしい。浮世絵は静かなのが特徴と思っていたが、北斎は音や動きも描き込んでいる。大工の鋸を引く音が聴こえるような気がする。

「武州玉川」(Tama River in the Musasi Provincer)も川波の線描がユニーク。横の霞の直線、富士や舟と人などの曲線のバランスの妙は、素人目にも多くの工夫がこらされていると思う。

諸國滝廻り(1833前後)では「木曽路ノ奥阿弥陀ケ瀧」(The Waterfall of Amida behind the Kiso Road )の滝落下が印象的。崖の上で滝見の昼食とは。
滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半
なる句を思い浮かべた。

花鳥版画も見事なものばかり。「朝顔に蛙」(Morning Glories in Flours and Buds )
のどこに蛙がいるのか、と係員に訊ねている青年がいた。してやったりと北斎は思ったに違いない。画集には「Volubilism and Pippin 」というのもあったが、同じものか。

ーと、挙げればきりもない。ベロ藍か何か知らぬが、北斎ブルーの鮮やかさと多彩な表現(とくに今回は北斎に点描が多いのに気づいたが)、にあらためて驚愕する。ヨーロッパ、とくに印象派の画家に衝撃的な影響を与えたというのは、むべなるかなと思った。

娘 応為の「三曲合奏図」(1844ー48)を観られたのも幸せというもの。キャサリン・ゴヴィエ「応為と北斎」をつい最近読んだばかりである。

関連記事 葛飾応為の水彩画風浮世絵
http://toshiro5.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09

「吉原遊廓の景 」(1811頃)は、大判五枚続き、北斎の最大作品という。画集では英題名「New Year's Days of the Tea House Ogi-ya 」と訳すが、荻屋(?)が楼の名前なのだろうか。大勢の女のうち、二人だけ正面を向いているが、応為の三曲合奏図の胡弓を弾く女性の顔に良く似ている。気のせいか。
何人か描かれている男衆の表情はなかなか味がある。北斎は男の描写が面白い。さすが漫画の北斎だ。

生涯に3万点を描いたという北斎だが、ボストンの名品140点に圧倒されてしまった。と同時に一体どのくらい海外に流出したのかと、しみじみとため息が出る。

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