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エドヴァルド・ムンクのパステル画 [絵]

エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch 1863ー1944 80歳で没)は、19〜20世紀のノルウェー出身の画家。名作「The Scream 叫び」の作者として有名で、ノルウェーでは国民的な画家である。

おもに1890年代に制作したこの「叫び」のほか「接吻」、「吸血鬼」、「マドンナ」、「灰」などの一連の作品を、画家は「生命のフリーズ」と称し、連作と位置付けている。「フリーズ」とは、西洋の古典様式建築の柱列の上方にある横長の帯状装飾部分のこと。いわば連続したもの、「シリーズ」というような意味で使われている。これらの作品に共通するテーマは愛、生と死の問題、そして、人間存在の根幹に存在する、「孤独」、「嫉妬」、「不安」などである。

パステル画を油彩と並べたりして観てみた。

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「Tavern in St. Cloud」(1890 パステル) Tavernは居酒屋のこと。
「By the Deathbed (Fever)」(1893 パステル)
「The Death bed」( 1895 oil) 油彩はパステルが描かれたあとの2年後に描かれた。これをパステルとする画集もある。「1893 パステル」の方は壁に人の顔が描かれているがこちらは消えている。
2枚の絵の違いをどう見るのか。

「The Scream」( 1893 オイル テンペラ パステル)「叫び」は4点制作され、ムンク美術館に2点所蔵されているほか、オスロ国立美術館所蔵と個人所蔵のものが1点ずつあるという。
この絵は「橋の上の男が叫んでいる」のではなく「橋の上の男が叫びに耐えかねて耳を押さえている」様子を描いた絵と説明される。テンペラは水彩の一種だが、この絵がテンペラと油彩とパステルのミックスとは恥ずかしながら知らなかった。油彩とばかり思い込んでいた。

「The Sick Child 」(油彩1885-86)右下のコップの赤い液体が目を惹く。薬だろうか。
「The Sick Child II」(1896 リトグラフ )油彩をもとにリトグラフを作ったのであろう。

「Salome Paraphrase 」(1894-98 水彩、インクと鉛筆)サロメ風とでも訳すのか。

「Madonna 」(油彩 1894-95 )別名「受胎」とも呼ばれるムンクの代表作のひとつ。赤いヘアバンド(?)が強烈。
「Madonna 1895 」(リトグラフ 水彩 )左下の子供のような人は油彩にはない。どちらも不気味に変わりがないが、こちらのマドンナの目が現実ばなれしていて怖い。

「The Flower of Pain 」(1897 インディアンインク ウオッシュ 水彩 クレヨン)痛みの花?

「壁の前の自画像 」(1926 油彩 )63歳。ムンクは多数の独特の自画像を描いた。地獄の自画像などというものまである。
「縞のプルオーバーを着た自画像 」(1940-44油彩 )最晩年の自画像。1944年は80歳、没年。

1890年代に生命のフリーズを描いた頃、1902年に恋人トゥーラ・ラールセンとの諍いで指を銃の暴発事故で吹き飛ばされる事件が起きたりして、その後一時期ムンク自身、精神的な危機に陥っている。
そして1908年10月、アルコール依存症を治すため、コペンハーゲンのダニエル・ヤーコブソン教授の精神病院に自発的に入院する。
しかし、翌1909年には、精神療法も兼ねて、詩文集「アルファとオメガ」を執筆し、健康を取り戻して退院した。この危機からの生還には惹かれるものがあるが、不学にして知らない。

さて、晩年のムンクは第二次大戦でナチから退廃芸術とされ、アトリエに引き籠る。戦争の終結を待たず前年1944年亡くなっているが、最後まで自画像などを描き続けた。

若い時からこの間の自画像を、もとより危機脱出の経緯が明らかになる筈もないが、5枚(すべて油彩画)並べてみた。見ようによっては5枚に共通する何かがある。たぶん先入観のせいだろう。

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「自画像 」(1881-2油彩 )22歳。
「煙草をふかしている自画像 」(1895 油彩)32歳。
「自画像Ⅰ 」(1895-6 リトグラフィ )手前にあるのは腕の骨か。モノトーンが不気味。
「ジャコブソン教授病院の自画像 」(1909 油彩)46歳。一見、元気そうに見える。
「時計とベッドの間の自画像」(1940-43油彩)77-80歳。晩年の自画像。流石に枯れた感じである。


北欧の気候や若い時に母を喪ったこと、姉や弟の死などがムンクの生命のフリーズに影響を与えたことは、よく指摘される。それはその通りであろうが、ムンクの絵を見ている誰もが心の中に同じ不安や孤独感、そして存在そのものへのおののきなどの辛い思いを持っていることも確かだ。
数度にわたるムンク名画の盗難事件や、没後70年過ぎて変わらぬ人気がそれを物語っている。
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