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アンリ・マティス グヮッシュの切り紙絵7 (終) 余録 [絵]



さて、マティスの切り紙絵を見て、あらためてマティスが巨人であることを思い知らされた。マティスの研究者や絵の専門家には、初歩的なことで笑われそうだが、アマチュアにはあらためて驚くことが多い。
初めて教えて貰ってビックリしている中学生のように、へぇと思ったことをランダムに幾つか。いつもの余談、備忘、補遺…である。

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①これもマティスの晩年の絵だが、1本の樹を描いたものがある。黒い筆の一筆書きのような単純なものだが、どこか惹きつける絵だ。構図が切り絵の「La Gerbe 束 」(1953 )と似ているなと思う。「Le platane プラタナス 」(1951 )である。見ると区別がつかないくらいそっくりののもう一枚があった。
「Le Buisson 低木 」(1951 )である。枝はどちらも七本。見分け方は、「プラタナス」は根が二股、二本。「低木」の方は根が三本ある。

②マティスは、切り紙挿し絵本ジャズのほか、本の装丁や「ヴェルヴの表紙 」(1948)なども手がけている。また、「Mille Et Une Nuits 版画集 千夜一夜物語」もある。Thousand and One Nights 、シェラザードだ。病気によっても創作、追究意欲が落ちていないことに感心する。

③「Madame de Pompadour ポンピドー夫人」(1951 )も晩年のもので切り絵と黒い線画。ポンピドー大統領夫人か、ポンパドゥール侯爵夫人か知らないが。なんともマティスらしい絵だ。

④「Tree Of Life' Stained Glass Behind The Altar In The Chapel Of The Rosary At Vence 祭壇の背後のステンドグラス命の木 ヴァンスのロザリー教会」(1948-1951)
メディアはヴィトラージュとある。擦りガラスの技法か。晩年のマティスは教会のステンドグラスやセラミックの壁画にも取り組む。教会の祭壇に光を取り込もうとし、壁に聖人をマティスの線で現出させようとしている。

⑤「Still life with Books and Candle 本とろうそくのある静物」(1890 油彩)マティスの最も若い時(21歳)の絵。生真面目なそして静謐な絵。これと晩年の油彩「オリーブの樹の大通り 」(1952 )や切り紙絵「ブルーヌード」(1952)などと並べて眺めていると、画家が絵を追求した60年以上の長い時間をあらためて考えさせられる。そしてため息だけが出る。

⑥ブルーヌードのパーツ 。「ブルーヌードⅣ」だと思うが、切り取ったパーツを大きい順に並べたものを見つけた。研究者が試みに作ったものか。アマチュアにも何かしら絵画について考えさせられるものがある。

⑦「Decorative Figure On An Ornamental Background 鑑賞的な背景の装飾的な人物」(1925 油彩)Decorative、Ornamenntalとも装飾的だが。訳は「鑑賞的な背景の装飾的な人物」で良いのか。正しくはどう訳すのか。背景の方はわかるが、装飾的な人物(ヌード)とは何か。
マティスのヌードは、写実的なもの、デフォルメしたものなど多様だが、これは少し変わっているという気がする。デコラティブとデザイン性は近いような気もするが、牽強付会或いは単に考え過ぎか。

⑧猫 「ブルーキャット」これはマティスのものだろうか。マティスも愛猫家だったからあり得る切り絵と思いつつも、切り紙絵ははさみで切る「デザイン」だからだれでも出来るとかんがえると怪しくもなる。確認するすべもない。H.Mとサインもいくらでも似せられるだろうし…。

マティスとピカソは、ナチスのフランス占領下のパリから逃げ出さなかったという。ピカソが左翼、反体制派であったことは「ゲルニカ」とともに有名だが、マティスが反戦派でなかった筈はない。しかしピカソのような反戦画がないのだろうかなど、知りたいことはまだまだ多いが、晩年の切り紙絵を見るだけでへとへとになった。

一気に見てきたので、一人よがりは勿論だが、絵や、題名、制作年などに間違いがないか、やや自信なし。マティスの切り紙絵は、天地逆さでも気がつかないようなのも時にある。

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