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アルマ・タデマの水彩画2(終)-Ask me no more…もう、何も尋ねないで [絵]

まずは、前回に続き水彩画から。(記号: w …水彩、g…グワッシュ、b…ボディカラー、 o…油彩)


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「Xanthe and Phaon クサンテとパオン 」(1883 w )こぼれるばらの花びら。パオンとの結婚にためらいを見せているクサンテを描いている。大理石のベンチに腰をおろした女性と寝そべって頬杖をついた男性。この構図は、画家のお気に入りで似たものが何枚かある。
「The Drawing Room at Townshend House タウンゼントハウスの客室 」(1885 w )27.2×18.7cm。上に鳥籠のようなものがある。この絵はwatercolor とだけあって、ペン、鉛筆、チョークなどの記載が無いがなんという綿密な描き方か!超絶水彩技法だ。
タウンゼントハウスは、自宅として画家自ら設計して建てた豪邸。

「Drawing Room, Holland Park ホランドパークの客室 」(1887 w )ホランドパークはロンドンにある。壁に掛けられた絵つまり画中画は、ラファエル前派のようだが。ロセッティらと交流はあったらしい。この絵も上と同じく超綿密水彩画。

「Ask me no more...for at a touch I yield もう何も尋ねないで。触れれば、私はきっと挫けてしまうから。 」(1886 w)英詩人アルフレッド・テニスンの詩「女王プリンセス」から。大きさ不明だが、下の油彩(本制作であろう)と比べても遜色無い。

「Ask me no more もう何も尋ねないで 」(1906 oil )80.1 ×115.7 cmとかなり大きいサイズ。2枚は10年のインターバルがあるが、背景、椅子などが変わっているだけだ。

「Summer Offering 夏の供物 」(1894 w )白薔薇が供物か。それとも。後掲の油彩(1911)の習作と見られるが、これも15年の間隔がある。

「Interior of Caius Martius's House 」(1901 w b )左下に椅子。タデマの名作のひとつ。
視点が珍しく低い。
「In Beauty's Bloom」( 1911 w )最晩年の水彩画。歿年の前年になる。 花はカラーのよう。

「Self-portrait 自画像 」(1896 o )画家60歳。

「Study for Thermaie Antoniniane」( 1899 pencil )

いつものやり方だが、ネット画集で画家の水彩(ガッシュを含む。ときにパステルも)を探し、その過程で気になったり、良いなと勝手に思う油彩もファイルに保存する。いずれも、自分の水彩のお稽古に参考にならないかと思ってのことである。
作業に使う労力に比べ、たぶん役にはたっていないことは、自分のお稽古の上達ぶりを見れば分かる。

今回もそのうちの何枚かの油彩を。


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「Self portrait自画像」(1852 o )1852年アントワープのアカデミーに入学した年16歳というから驚く。
「Coign of Vantage 地の利」(1895 o )サイズ64.2× 54.0cm。
このタイトルの別訳は「見晴らしのよい場所」。アルマ=タデマ独特の、めまいのするような高さを感じさせる独特な遠近法を使用した画。高所恐怖症には辛いだろう。

はるか下にローマ艦隊の到着の様子が描かれ、向うむきで海を見ている獅子(?)の像と対照をなす。対岸の陸地がぼんやりとして空気遠近法も活用。
地中海の紺青と、眩く光る大理石の白が、印象的な対比を見せている。
絵のタイトル「A Coign of Vantage」 は、シェイクスピアの四大悲劇の一つ『マクベス』からの引用とか。(戦うには)良い地形だ、くらいか。

「Preparation in the Colosseum コロッセウムの準備」(1912 o )歿年、76歳の作品。競技開始前の支度 これも遠近法が独自 。斜め上から見て奥行きを出している。画家は豹柄がお好き。

「Summer Offering 夏の供物 」(1911o )前掲の水彩画の習作(1894)の本制作であろう。左にもう一人女性が加わっている。

「In the Tepidarium テピダリウム 微温浴室にて」(1881 o )
マネの草上の昼食、(オランピアも)は背景が現代(当時)であった故に世上騒然となり落選したが、このタデマのきわどいヌードは、背景が古代ローマ故にお咎めなしだったという。右手に肌かき器(ストリギル)、左手に扇。表情もふくめて実にきわどい。熊の毛皮、足元の赤い花も効果的だ。

「参考文献 サー・ローレンス・アルマ・タデマ 」(1993)
表紙は「Silver Favorite 銀色のお気に入り」( 1903 o )お気に入りは池の鯉という。銀鯉。
この絵をよく見ると、サインのあとにOp.CCCLX.....とある。画家は16歳のときに妹の肖像画を描きOp.1(作品番号1)としたそうだから、生涯に400点とも言われる作品に連番を記したのだろうか。さすれば、上掲の最晩年の作品「コロッセウムの準備」は、幾つになったのか。

掲げていないが、次の2枚はサインとOp.ナンバーが比較的はっきり見える。ただし制作番号はわからないが。
「Under the Roof of Blue Ionian Weather青いイオニアの大気の下で」(1901 color lithograph )55.0×120.5cm。
「The Year's at Spring. All's Right with the World 時は春、すべて世はこともなし 」(1902 o )

アルマ・タデマの歴史絵は、青い空と海、輝く大理石をふんだんに取り入れ、ヴィクトリア朝時代の顧客におおいに受け容れられた。精神性とかの批判はさておき、古代の詳細な建築、風俗時代考証などには文句なしに脱帽である。ハリウッド映画の映画に影響したというのもうなづける。ベン・ハーやクレオパトラを想起する。まるで見てきたように再現して、見る者に違和感を感じさせないようにするには、相当の研究と高度な技法が必要だったのではないか。

詳細な細密画というのはいくらでもあるが、なかでも大理石の硬質や輝きの描写には感心するものがある。水彩もまた油彩と同じようで、とてもアマチュア(自分のことだ)には手に負えない超絶技法。よってその点では、あまり参考にはならないように思う。
ただ、画家のヴィクトリア時代の顧客と同じ気分で絵を眺め、遠く地中海や古代ローマ、ギリシャに思いを馳せる愉しみはあるというもの。


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