やれ八十路雪の夜の夢横枕 [詩歌]
横枕は栃木県那須烏山市にある地名。歌枕ではない。
平成の大合併前は那須郡烏山町横枕。さらに古くは境村大字横枕。
知る人は少ないだろう。不思議な地名ではある。
地図には載っているが、謂れは聞いたことがない。やはり地図に載っている三斗蒔(さんどまき)という地名が近くにあり、そこが山峡の1番奥だった。
しかし、自分にとって横枕は、疎開の地で18歳までそこで暮らしたからいわば故郷、故園の地である。
上皇の疎開の地は日光であるが、同じ県ながら比較してもおよそ意味がない。
八溝山系の典型的な中山間地域、戦争は銀紙のようなものがパラパラと降ったことがあった記憶が、微かにある程度でほとんどなかった。母の実家を疎開地とした父の選択は、その点正解だったと言えよう。
疎開は学童疎開、集団疎開、縁故疎開など様々ながら、経験したものはそれぞれ忘れることの出来ない思い出を持って戦後を生きた。
地名というのは、「日本人のお名前!」ではないが、それに劣らず実に面白いものである。市町村合併で消えていくのはまことに惜しい。
昔の大字、小字さらにもっと狭くても地名はある。それぞれの地域の暮らしの中で付けられた地名だから、人の暮しや歴史の息づかいを感じるものもある。
転勤暮しで地方生活をすると、時折りへぇ、という地名に出会うことが多い。九州大分日田などに特に多かった覚えがある。
俳句や和歌に地名を読み込むのは多いが、だれでも知っている地ならともかく、知らない地を詠んでも読む人には何も想起しないので味気ない。歌の方が有名になればその地は歌枕になるが。
かくしてこの句は、せっかく「や行」だけを使ったのに、それだけの駄句に堕し、遺憾ながら横枕は歌枕にはならない。
初案は やれ八十路 雪に酔ふ夢 横枕
花に酔うという言葉はあるが、雪に酔ふはありそうでないだろうと考えた。なお未練がある。
かの地は冬底冷えがきついが雪は年に数度しか降らなかった。
絵はアイパッドアプリで描いた。右上が疎開した母の実家竹の入(屋号)の家。
(参考)那須烏山の記(一〜四)
https://toshiro5.blog.ss-blog.jp/2015-12-10
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