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快なり! [随想]

 快なり!


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 暮れに大河ドラマを見ていたら、竹中直人演ずる徳川斉昭が「快なり!」と叫んでいた。


 徳川 斉昭(とくがわ なりあき18001860)は、江戸時代後期の大名で常陸水戸藩の第9代藩主。江戸幕府第15代(最後)将軍徳川慶喜の実父である。藩政改革をなし、江戸徳川家の政事にも関わったが、井伊大老と対立して敗れ、水戸に蟄居した後60年の生涯を終えた。


 


 斉昭は慶喜はじめ二十七人の子を成したが、そのうちの多くは各国の大名の養子となったり、嫁いだりしている。


 まさに快男児で漢文の素養もあっただろうから、何かにつけ「快なり」くらい叫んだであろう。


 


 しかしながら、ここでは斉昭の事を書きたいのでなく「快」という文字についてである


 


「快なり!」の「快」は快い(こころよい)である。辞書によれば


 


快 [音]カイ(クヮイ)(漢) ケ(呉) [訓]こころよい


意味①こころよい。気持ちがよい。よろこばしい。「快活」「快挙」「快調」 ②病気が治る。「快気」「快癒」 ③はやい。すみやかに。「快足」「快速」④ すばらしい。「快漢・快記録・快男児」


[参考]「こころよい」は「心良い」からできた語。」とある。


 


 つまり快には「気持ちがよい」「病が治る」「速い」「素晴らしい」の四つの意味がある。


 


 快の入った単語(快が後に来る)には痛快 愉快 爽快 欣快 壮快 全快 明快 豪快 雄快などがあるが、「快なり」の「快」とはこれらをほぼ全て含むものか。


 


 反対語は不快 不愉快だろう。これを使って「不快なり!」「不愉快なり!」と叫んではならない。小物になる。


 類語は「心地よい」か。


 


 ほかに快を使った単語をさがしてみた。(快が先にくる)


快意 快泳 快演 快活 快挙 快気 快勝 快晴 快活 快適 快弁 快方 快報 快調 快暢 快飲 快食 快便 快眠 快通 快楽 快感 快癒 快復 快諾 快哉 快音 快速 快足 快走 快投 快打 快闊 快漢 快意 快美 快著 快聞


などがある。


 


 三文字では


快気祝 快気炎(怪気炎のもじり快削鋼 快進撃 快速球


快快的 カイカイデ(中国語)急いで。早く。


 


 四文字では


快楽主義 快速急行 


単純明快 論旨明快 快刀乱麻(を断つ) =四字熟語など


 


 こうしてみると、快を使った単語は快の字が含む四つの意味が良いものであることから、当然良い言葉が多い。


 嫌な言葉はほとんど無い。一例をあげれば、快食 快眠 快便()。健康の証拠でありこれを心がければ長生きが出来ると遠縁の医者が強調していたのを思い出す。


 


 「快」の漢字の成り立ちは諸説あるようだが、ネットで調べると大方次のとおり。


 快は形声文字である。(()+)。「心臓」の象形(「心」の意味)と「象牙製で中がえぐられた弦を引く為の道具を手にした人」の象形(道具とは「弓を射る時にはめる皮製の手袋」、ここでは「活」に通じ(「活」と同じ意味を持つようになって)、「いきいきする」の意味)から、「心がいきいきする」、「ここちよい」を意味する「快」という漢字が成り立った。


 


 形声文字とは、意味を表す部分(意符)と音を表す部分(音符)を組み合わせて作られた文字のこと。漢字の90%がこの形声文字になるらしい。 快の場合は意符はりっしんべんで心臓、心を表す。音符は「夬(カイguài)、(ケツ」で意味は「抉(えぐ)る」、「欠ける」、「分ける」である。


 


 夬、快、抉、決、訣、缺(欠)、闕などがこの漢字の仲間(単語家族ともいう)である。


なるほど、単語家族も意符と音符に分けると分かりやすいかも。


 


「夬(カイ)」guàiは、コの字型に抉(えぐ)っている様子を表す会意文字。漢字の足し算では、丨(指)+コ+ヨ(手)=夬(コの字型に抉る。えぐる。わける)。漢字の部首は「大・だい」。意味は「抉(えぐ)る」、「分ける」。と説明する人もいる。


 


 要すれば、ストレスや病根など、心身によくないものをえぐり取り去って気分がよくなるという意味と理解すれば良いか。


 


 余談ながら、「怪」の意符も心(りっしんべん)、音符の又は右手、その下に土があるが、これは土地の神を祀る時に使う土柱であり、神を祀るひとの異常な精神状態(憑依?)を表すらしい。「怪」は似ているので「快」の単語を探していてしばしば間違えた。(怪傑 怪物 怪僧 怪談 怪奇 怪人 怪獣 怪盗 怪気炎など)


 


 それにしても日本語は奥が深い。言葉は山ほどあるが、「快」の一字でも色々と学ぶことが多くあるものだ。他の文字も全てかくなるストーリーを持っているのだ、としみじみ感じ入る。


 


蛇足①戯れ歌


 


猫は世を 快と不快に分けて棲む にゃあは快なり ぎゃあは不愉快


世の中を 快と不快に分けたれば 快は少なし 不愉快多し


 


蛇足②


「快」は子供の名にも使われる。最近では、男子は「快翔(かいと)」、女子は「快菜(何と読むのか知らぬ。カイナ?)など。


さすがに「怪」の字は使わないだろう。


 


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